天女も百名山全山日帰り達成 白根三山 その3
恐怖の農鳥小屋(妄想)

09年9月26日




農鳥小屋へ・・・

はるか下の鞍部に農鳥小屋の赤い屋根が見えますが、ガスが上がってきておどろおどろしい雰囲気です。冥界に引きずり込まれるように下っていきます。


もっと真っ赤に見えたのですが・・・
果てしなく下る




やっと下りきって小屋まであと5分位の所
農鳥小屋へ・・・
これももっともっときれいだったのですが・・・

すごくもったいないなぁと思いながらも、ようやく下り終えて、いよいよ農鳥小屋が近づいてきました。

事前調査で「農鳥小屋のオヤジは変わり者で口うるさいから相手にしないほうが良い」という評判であったので、小心者の錆鉄人はおびえながら歩いていました。

後日、ワンゲルの時に農鳥小屋に泊ったという二女に聞くと、「誰かがちょっと大きい声で話しをしただけで怒られていたし、もの凄く変わっていた。」との事でした。その前に、白根三山を日帰り縦走するなんて!と言われましたが・・・
農鳥小屋の恐怖

12:36 遂に農鳥小屋に到着。
普通の小屋なら周辺に登山者がたむろしているものですが、登山者は一人も見えず不気味な雰囲気です。
右手の小屋の前に中年のオッサンがいたので、オヤジかもしれないと反射的に避けて左側に進路を取りました。(これは嘘です、売店はこちらと表示されていたからですが・・・)

農鳥小屋は写真のように一段低い所にあって、風を避けるような立地になっています。天女期待の売店は、小屋のほうに下りずに左側を進むように表示があったので進みました。
するとデジ一眼を持ったオヤジの生贄(宿泊者)とおぼしき男性が撮影していて、思わず「可哀そうに・・・」と心の中で呟く錆鉄人は、気の毒で話しかける事も出来ません。

突き当りをちょっと下りた所に小さな売店がありましたが、誰もいません。
Tシャツを買いたい一心の天女は、靴を脱いで勝手に中に入ろうとするので、「誰もいないのにそれはまずいよ。」と言って「済みませーん!」と声を上げましたが返事はありません。何度か叫んでも来ないので、Tシャツがあったらお金を置いて買って行こうか等と話していると、やっと小屋の前で作業をしていた人が現れました。

錆鉄人は噂のオヤジでありませんようにと祈りながら、いかにもブッキラボウな感じのその人に「アクエリアスを下さい」と言いましたが、返事もせずに「これから何処に行くのか」と聞かれ、「農鳥岳を回って奈良田に6時頃に下る予定です」と答えると「6時に着くなんて言う者と話は出来ん!」とピシャリ。

「恐れは的中した」と即時に理解する錆鉄人。
まさか、アクエリアスも売ってくれないかも?と恐れた錆鉄人は「僕らは百名山の日帰りばかりをしている変人なので・・・どうも済みません。」と謝ったおかげか、ちゃんと500円で売ってくれたので一安心。とりあえず大門沢小屋までの飲み物の心配はなくなりました。

凍った時間
(農鳥小屋の写真は、身も凍るような恐怖に金縛り状態の錆鉄人だったのでありません。もちろん、オヤジの写真など撮れるはずがありません。)

天女が「女物のTシャツはありますか?」と聞くと「ないよ」と素っ気ない返事
そこは北岳山荘で学習済みの錆鉄人が「SサイズのTシャツはありますか?」と聞き直すと、ありました!段ボール箱にたくさん入っているではありませんか。
買物をする時の天女は、いつでも選択に迷いに迷うので、もの凄く時間がかかります。錆鉄人は慣れているので天女らしい優雅な所作だと「うっとり」と眺めて待っていますが、普通の人はうんざりに違いありません。
ましてや変人で有名な農鳥のオヤジを怒らせたら、天女の折角の記念Tシャツが買えなくなるかもしれません。オヤジの機嫌を損なわないように、愛妻家の錆鉄人は、迷っている天女に素早く適切な助言をするのでありました。

という事で、天女は空前絶後の早業、僅か数分(その間、錆鉄人はハラハラドキドキ)で「北岳、間ノ岳、農鳥岳のシルエットがあって農鳥小屋と書いてある」エンジ色の長袖Tシャツ3,500円を買う事になったのであります。(って、それ1種類しかなくて、青かエンジを選ぶだけなんで、錆鉄人的には10秒以内で済むのですが・・・)
ここまで、錆鉄人はオヤジの機嫌を損なわないかと注視していましたが、それほど不機嫌そうではありませんでした。天女効果かもしれません。



無事Tシャツを買って逃げられると思った瞬間、天女が「やっぱり半袖にします」と言いだすではありませんか。

事前に注意しておくのを忘れた錆鉄人は、思わず目をつぶりましたが、オヤジは不思議な事に怒りもせずに「3,000円」(「です」とか「ありがとう」とかは絶対に言いません)と言って、半袖Tシャツを取り出してくれました。

風評に惑わされて恐れていた錆鉄人が間違っていたのか、それとも天女の愛の力がオヤジを更生させたのかはわかりませんが、無事普通に買い物が出来たのでありました。

という事で、錆鉄人的には物凄く長い時間だったように感じましたが、買ってしまえば、あとはお小言を頂戴しないうちに一目散に逃げるしかありません。(こんな事を書いていると、もう農鳥小屋には近づけませんね。)

【お断り】
以上は、風評に惑わされて恐怖に駆られた錆鉄人が、ドキュメンタリー風に臨場感を高めた「創作紀行文」であり、一部に(大部分かも?大部分です!)「誇張と妄想」が混じっております事をお断りしておきます。
農鳥のヤジさんはぶっきら棒ですが、無謀登山者に注意をする本当はいいオヤジなんだろうと思います。(そんなに長い付き合いをしていないので推測ですが・・・)
小屋に泊った登山者も、頑固オヤジと滅多にない経験が出来て楽しい思い出になると思います。(注意:滅多にない経験には、恐怖の体験も含まれるかも?)



農鳥小屋から脱出

6時頃には奈良田に戻ると言った手前、カッコ良くスタスタと歩きださなくてはなりませんが、西農鳥岳への登りは結構急で、天女の登り足に変調が・・・、ま、まさか、農取のオヤジの「呪い」で金縛りになっているのでしょうか?
(まだやっているのかと言われそうなので、ここで妄想は中止。但し、時々現れるかも?)

天女は単に疲れが出て足が上がらなくなっただけですが、北岳への登りで張り切り過ぎたためではないかと思われます。


こんな感じの所も越えて・・・
西農鳥岳へ

「楽しい思い出」の農鳥小屋ともお別れです


天女愛用の2,980円のザック
尻下がりでカッコ悪いですが・・・
連なる峰々

アレ!まだ農鳥小屋から監視されている!

オヤジの視線を感じる錆鉄人でありました。


さて、農鳥岳から目の前に見える斜面さえ登ってしまえばあとは楽々と思っていましたが、いくつもの峰々が連なっています。(小屋からもギザギザは見えたのではありましたが・・・)そして険しい岩場まで。
しかしながら見上げるような登りはもうありません。ちょっとした登りでも極端にスピードが遅くなる天女ですが、間ノ岳に予定より早く着いていたので焦らず急がせないで、天女の膝や疲れのみを気遣う優しい錆鉄人でありました。
(細かい計画表は作ったのですが、相変わらず持ってきていないので、間ノ岳12時、奈良田6時15分位しか覚えていなかったのですが・・・)
農鳥岳へ

1〜2ヶ所、手を使うような岩場がありました


という事で、ほとんどコースタイムと同じ位時間がかかってしまいましたが、13:57 農鳥岳に到着。(写真は農鳥小屋で命からがら買ったTシャツ
頂上の少し手前で2人づれの登山者が下りてくるので、今日はどちらから?と聞くと、白根御池小屋からと言われました。向こうから縦走してきたとばかり思っていた錆鉄人はトンチンカンな説明を天女にしましたが、北岳・間ノ岳経由で農鳥岳まで来て、戻って農鳥小屋に泊るという事が分かりました。
錆鉄人は「可哀そうに・・・」という言葉を飲みこんで別れました。

いえいえ、農鳥小屋でオヤジと会話すれば、素晴らしい人生経験になるはずです。若者よ!農鳥小屋に泊って孤独なオヤジと仲良くなりましょう!
稜線歩き

これももっともっときれいだったのですが・・・


この先どうなるの?って感じですが、
どうって事はなかったです
ガス

チングルマ


何もない稜線歩きが続きかなりガスが出てきましたが、踏み跡は明瞭で天女も新道開拓には至りませんでした。
大門沢下降点 14:27

ここは右のプレートにあるように、下降点が分からずに遭難された登山者の両親と山岳会が、再びそういう遭難が起こらないようにと立てられたものです。感謝!

数メートル先のケルンの所から左に下ります。



木村雅也 23歳

昭和43年1月4日
吹雪の為下降点を
確認し得ず此の地に
ビバークしこれより下方
縦走路にて力尽き永眠す
急な降下

さて、大門沢下降点まで思わぬ時間がかかりましたが、ここからの下りは足を止めているとズルズル滑りそうな急坂で、途中には岩の積み重なった所もあったので、安全第一のペースで下りました。


急な坂が終わって、「山の中は早く暗くなるから、安全な所はガンガン行って明るいうちに林道まで行きたい」と言うと、天女は得意の速足で進んでいきます。写真を撮っていると離されれてしまって、走って追い着くを繰り返しました。
木の橋

やがていくつもの木の橋が現れてきました。
には聞いていましたが、見るからに怖そうな橋です。(真ん中辺りで折れていました!)天女は怖々渡るので一気にスピードダウン。
いくつもいくつも現れるので、思い通りに時間短縮が出来ません。

いかにも原始的な登山道という感じで、ワクワクしませんか?


怖いのは落ちそうという事ではなく
「折れそう」という怖さです

ここで給水休憩
冷たい水がおいしかったので
ペットボトル3本に給水しました。
大門沢小屋 16:00

それでもコースタイムは3時間ですから、ほぼ半分の時間で到着。
登山道はこの先に続いていると思って進みましたが・・・


小屋の前へ回り込んで、写真を撮ってそのまま進もうとすると「下るの?」と聞かれたので「はい」と答えると、戻って沢の方に下るように教えられました。(左の写真を撮影している辺りから左に下る所がありました)
怖い木の橋

足をどこへ置けば安全かしら?
体力よりも頭を使って通ります


木は親切で付けてくれたのでしょうが・・・
木だけには足を置けません
木道は続くよどこまでも!

手作りのアスレチックのような・・・

天女も慣れっこになってしまったようなお姿ですが
実際は相変わらず恐る恐るで
1歩ずつ折れないか確かめて進んでいました。
(腰が引けていますね)


登山道を水が流れている所もありました

下山は続くよどこまでも

急な斜面をジグザグに下りました
まるで走っているような天女の姿ですが
止まらないほど急な場所です


まだあった!
吊り橋

看板があってもいいような大岩


第一の吊り橋
原始から近代へ

この辺りになると登山道に原始の姿はありません。


何と!
第二、第三の吊り橋

注意書きの通り、天女が渡り終えるのを待ちました。

錆鉄人は薄くて古びた踏み板の強度が不安で、横木のある所へしか足を置きませんでした。そのためには相当な大股にしないと届かないのですが、そうすると1歩1歩の衝撃が強くなって揺れは大きくなるのでありました。


安心感バッチリの第三の吊り橋
向こう岸の右下に林道が見えています
林道

17:10 遂に林道に出ました。
ここまで明るいうちにと思っていましたが、余裕で到着。
沢沿いだったので登山道が暗くならなかったようです。

少し歩くと舗装道になりました。


長い林道歩きの末、車止めに到着
って、20分弱ですから2km弱ですが・・・

車止めの手前右側に
数台分の駐車スペースがありました。
向こうに見えるのが奈良田第一発電所です。
開運トンネルのゲート 17:30
名高い(悪名)開運トンネルのゲート!
高さは3m位あり、上部は武者返しのように反っています!
そこまで意地悪しなくても・・・
冬山に登る人はこのゲートをよじ登って帰還するそうですが、登れなくてゲート遭難する登山者が出てこないか心配する錆鉄人です。

錆鉄人は最初、遅くなったらここをよじ登らなくてはいけないのかと思っていたのでありました。

分かった!
こんな所を登れないような人は、冬山には行ってはいけないという事か!
石鎚山の試しの鎖のようなものかもしれません。


大門沢小屋小屋への林道は左です
奈良田駐車場
開運トンネル(奈良田第一発電所)からは文明世界です。
M&Mさんの縦走記を読んだ時、masaさんがザックを置いて車を取りに走って行ってmoeさんを迎えに来たと書いてあったので、愛妻家の錆鉄人は「走って行って車で迎えに来ようか」と言うと、天女は「お父さんも疲れているから歩くわよ」と言ってくれました。いつも優しい天女であります。

という事で、ラブラブでブラブラ林道を歩いて下りました。

橋を渡って少し下った所が河川敷の臨時駐車場です。駐車している車は僅か10台ほど。テントの後ろではテーブルを持ち出して宴会中でした。

という事で、天女も遂に百名山全山日帰りを達成!
百の頂きに百の思い出と百の喜びを天女と共有出来て、とても幸せな錆鉄人でありました。

そういえば、先日久々にアルバイトに行った天女から電話があったのですが、「観音様にお参りしながら登ったのは岩木山だったかしら、岩手山だったかしら?」
天女の場合は、「百の頂きに百の忘却あり」だったりして?
決してそんな事はありません!正確な情報を知人に伝えるために確認の電話をしてきただけですから。でも、もう1回百名山を登っても、天女は全ての山に感動してくれると思います。


17:45 奈良田駐車場
女帝の湯
帰りの事を考えると、河川敷に駐車したほうが楽ですが、下山後の温泉を考えてバス乗り場の駐車場にしたのでした。河川敷の駐車場からほぼ5分、17:45車に戻ってみると、ここの駐車場もガラガラではありませんか。
この時点で錆鉄人は温泉の事しか考え知なかったので、ここで本当の日帰り達成したのですが写真撮影をすっかり忘れていました。長い林道歩きでうんざりしていた事も要因だったかもしれません。

バス乗り場の所に近道2分と書いてありましたが、愛妻家の錆鉄人は疲れている天女の為に、この時間なら駐車場も空いているだろうと、車で200mほど戻り、狭い坂を上って行きました。
しかし、駐車場らしきものは2台分ありましたが、埋まっていました。この坂道の取り付きの左側にある広い駐車場に、奈良田の湯の駐車場と表示されていた理由が分かりました。(ここから歩くのは結構大変かも?)

という事で、バス停横の駐車場に戻り、ついでにもっとバス停に近い所に駐車しなおしました。その方がトイレにも温泉の登り口にも近いからでした。



(カメラを持っていかなかったので女帝の湯の写真はありません。決して、奈良とのオヤジの亡霊に恐れていたためではありません)

という事で、戸を開けて入ると売店があって、中は事務所のようになっていますが、入浴券売り場とかいう表示がないので、そのまま温泉のほうに進んで行きました。温泉入口に着きましたが、そこには入浴券の自動販売機はありません。愛妻家の錆鉄人は「私はもう入るからね」と行ってさっさと中に入って行った天女の為に、長い道中を戻って入浴券を買ったのでありました。(1人500円)

という事で中に入りましたが、予想通り一人いるだけ。東京の人でしたが、4時頃に来て、終わり頃までいて、また帰るとの事でした。
まずは身体を洗わなければと洗い場に座りましたが、お湯がぬるいのです。しかたがないので、お湯だけで洗いましたが、何とツルツルするではありませんか。お湯は温泉そのものだったのでありました。頭を洗うと、汗だらけだったのでショッパかったです。
それから全身を洗ってシャワーを掛けて、いよいよ入湯。
浴槽は左の浴槽に温泉が入ってきて、真ん中の仕切に凹みがあって、右側に流れ込むようになっていました。左側もややぬるめのような温度なので、右側だと何時間でもつかっていられそうでした。錆鉄人的には、今まで入ったなかで一番長湯が出来る湯加減でした。

天女もすっかり気に入って、今までで一番良かったかも、と言いました。折角の秘湯に浴客が押し寄せないように、良かったと書かない方がいいんじゃないと言いましたが、書いてしまいました。

翌日は身延山観光と下部ホテル日帰り入浴です。

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