神々の座 冬の上高地
(撮影02年03月21日)

厳冬期の上高地
Webで厳冬期の上高地に幕営した記録を見たことがある。
暗くて急な登りの釜トンネルは凍っていてアイゼンが必要な事。
上高地の気温はマイナス20度にもなり、荒れると大変な事。
一般観光客を寄せ付けないもっとも上高地らしい季節かも知れない。
いつかは自分も厳冬期の上高地で幕営してみたいと思い始めた。

21日の午前中は快晴の予報が出ていたので
もう厳冬期は過ぎているがワクワクしながら訪れてみた。
どうやって行くの?
3月初めにスタッドレスを普通タイヤに交換してしまってから、「しまった!上高地に行きたいと思っていたのに・・・」と後悔していましたが、この所の暖かさで普通タイヤでも問題はなく走行出来ました。
丹南からは大野・白鳥・庄川・高山経由で平湯まで約210km程度です。3月20日夜7時半頃自宅を出発し、下道ばっかりで平湯には11時前に到着。ひるがの高原では気温-2度を表示していましたが、路面の凍結もなく普通タイヤで通行出来ました。ただし、4月中旬頃までは路面凍結の恐れがあるのではないかと考えられますので、慎重な運転が必要です。
一般国道で高山・平湯に向かう場合、油坂峠は道路幅が狭い所へ大型トラックが高速で進行してきますので、注意してください。また蛭ヶ野高原への登りは急カーブが何カ所かありますので、速度に注意願います。

今年の異常気象のおかげで上高地も暖かく、雪解けも進んでいると思われますが、例年5月中旬頃までは雪も降り、一旦荒れれば遭難の可能性もありますので、天候と装備、スケジュールには充分ご注意願います。
また、記入したタイムは休憩なしで結構急ぎ足のタイムですので、通常の場合は1.5〜2倍時間を見て下さい。
駐車場
駐車場は有料の安房トンネル入口の手前に駐車場があり、自分はここに駐車しましたが、シーズンには満車が予想されます。平湯のバスターミナルにも駐車場がありますが、長時間の駐車は禁止されています。観光シーズンは、町営のアカンダナ駐車場に駐車しシャトルバスで上高地入りします。
自分の場合はトンネル入口の駐車場に駐車して午前3時頃まで仮眠し、朝食を食べ装備の最チェックをして3時半頃トンネル入口に向かった所、運良く来た車に乗せてもらえました。(娘さんの大学卒業の引っ越しで千葉まで行くという金沢の人)

ちなみに帰りも乗せてもらおうと、何度も手を振りましたが、5〜6台目でやっと止まってくれて乗せてもらいました。(大町温泉に泊まったが、今日の帰りは50km位の渋滞が予想されるので敬遠してもう1日富山観光に行くという東京の夫婦連れ)

トンネルの長野側入口手前に駐車した車の列(11:04)
恐怖の釜トンネル
二十数年前、初めて自分の車で上高地に入った時の事です。
明るい日差しの中で信号待ちしていて、前車が進んだので従ってトンネルの中に入りました。ヘッドライトは点けていましたがトンネルの照明はなく、真っ暗闇に目が慣れていないので何がなんだか分からない内に、みるみるスピードが落ちてエンストしそうになりました。
それくらい急な登りのトンネルの中は、凍り付いていてアイゼンなしには歩けない
との情報を得ていましたが、気温は1度前後でありアイゼンなしで大丈夫でした。トンネル内も今では真っ暗闇の部分は少なくて、所々に蛍光灯がぶらさがっていてトンネル全体が確認出来安心でした。
小心者の錆鉄人は、トンネルの真っ暗闇の部分を通過する時には、そこに熊でもいるかもしれないとピッケルを身構えていたのでしたが・・・。
3:45 トンネル入口
入った所に登山者用トイレが設置されています。

暖かくなったといっても
漏水が凍結した巨大なツララが
河童橋まで
4時丁度、恐怖のトンネルを抜けました。雪道を想像していたのですが、きれいに除雪してあって乾いたアスファルトがむき出しでした。少し進んだ所に工事中の新しいトンネルの出口があり、その明かりの所に入山者がひとり一服していた。一緒に行くと心強いのですが、日の出前に河童橋まで行きたかったので挨拶をして先に進みました。
除雪はかなり先まで進んでいましたが、表面の水が凍っている所も多く(黒く光る)、白く見えるアスファルトの上を選んで進みます。結局除雪してないのはバスターミナル手前2km程でした。
バスターミナルには5時前に到着。トイレは閉まっていました。飲料水が2回のベランダにありますの貼り紙を真に受けて登ったら、水はなく、凍った雪で危うく転倒しそうになりました。
河童橋には5時10分到着。星明かりで山のシルエットは分かりますが、誰1人いません。ふと、夜明け前の闇が一番暗いという一節が浮かび上がってきました。

5:22 やっとデジカメに写った奥穂
夜明け前
ここまでシャツの上に薄手のセーター、その上にチェックシャツ、下は薄手のタイツにズボンという姿でしたが、風が吹いていて寒さを感じたので、ずっと待っていなければならない事もあり、昨年買ったダウンジャッケットを着ました。2万円もしましたが使用するのは初めてでした。最初はシャツが汗で濡れている事もあり寒かったですが、そのうち寒くなくなった。気温は−1度位でした。
5時半頃でしょうか、小鳥の鳴き声が聞こえ始めました。空の明るさを反映して、頂上付近は相当に明るくなり、もしかして日光が当たっているのだろうかと思う程でした。

5:36 空の明るさに山が浮かび上がる
朝日の入光
5時52分、待ちに待った瞬間が訪れる。

まだ誰もいない。
神秘的なこの瞬間を独り占め。
家族の健康と安全を願う。

次はどこに陽が当たるのだろうと思いながら見続ける。6時を過ぎた頃、入山者がひとり現れる。

奥穂高岳に朝日が射し込んだ瞬間
荘厳な夜明け
6:00 焼け岳にも朝日が射し込む
その時間の西穂〜奥穂
奥穂高岳
刻一刻と表情を変える山々の姿を撮しまくりながら、ただただ感動。

6:08 奥穂高岳
明神池へ向かう
6時半過ぎてようやく我に返り、とたんに空腹を感じ、ザックからパンを出して食べました。
もう1人の人と話しをしました。横浜の人で今日から小梨平で2日幕営するとの事。奥穂をバックにお互いを撮し合ったが、シャッターを半押ししただけだったのか、自分のカメラには写っていなくて残念でした。
7時過ぎ、その人は天場に向かう。自分も明神池に向かって出発しました。
足跡は陽の当たる場所ではかすかになり、明神橋のかなり手前から河原に下りていたので、自分も下りましたが、川を渡ってから登るところが分からずに適当に対岸に上がりました。

   7:12 河童橋から少し進んだ所
つぼ足は数人分の足跡がありましたが、自分は大股で歩くクセなので無視して歩きましたが、特にがぶり事はありませんでした。
穂高神社奥宮
7時27分、案外早く明神池に到着。
明神岳と鳥居を一緒に撮そうとするとなかなか画面に入りきらない。一般のデジカメは最広角が1眼レフ38mm相当のものが多いが、(ちなみにこの所自分が愛用しているのはカシオのQV-2800で、レンズの角度が自由に変えられて、200万画素38mm〜8倍ズームかつ1cm!のマクロ撮影可能という性能です)
もう少し広角だったらいいのに・・・と思いました。
明神池一之池、二之池

一之池
澄み切った空気の中に
明神池が神々しい

二之池
芽吹き
明神橋のすぐ下流の川岸の木々は芽吹きが始まっていて、ネコヤナギが白く光っていました。
今度はこちら側から帰ろうと思ったのが失敗でした。景色を見るためにトレース(足跡らしい足跡はなかったが)を外れて川岸を歩いていたら川に行く手を遮られ、やっと渡れる所を捜して進むとまた川に阻まれる・・・とさんざん苦労して、8時44分やっと河童橋まで戻りました。

【教訓】
(いつもながら)地図の確認を怠らずに
再び河童橋から
結局一時間半もかかって明神池から戻ると、河童橋には数人が佇んでいました。
明日1日休みをもらえば4連休となるので、一服しただけで出発するパーティもいる。奥穂や槍を目指すのでしょうか。
ベンチで休んでいる人と話をしました。1人は山梨から来たという50代の男性で素っ気ない。しかし、この冬何回も上高地を訪れている写真マニアでした。もう一組は四日市から来たという夫婦連れでコーヒーをごちそうになりました。
ふたたびパンを食べようとザックから取り出すと、間髪を入れず鴨が飛んできてエサをねだる。
良くないと思いながらちぎって与える。手のひらの上からも食べて、少しも人間を警戒していないのは悲しむべきかもしれません。

9:15 鴨と奥穂
大正池
9時50分、河童橋を離れて戻り始める。続々と入山パーティに出会う。河童橋にいる間には20人ぐらいかなと思っていたが、50人以上になったと思われる。

大正池まで来ると木道の上の雪に足跡が続いていましたが、道路との間には水面があり移れません。木道が終わった所から湖岸に出ました。
四日市のおばさんが言っていたように、大正池の枯れ木はめっきり数が少なくなって、ただの広い河原という感じで寂しい。22年前、妻と結婚前に来てボートに乗った時は確かにもっとあったと思う。
ここの鴨も飼い慣らされているのか、雪を水面に投げただけで近寄ってきました。

大正池の枯れ木はたったの数本となり
かつての面影はありません(10:15)
下山
山には登っていないので、下山とは言わないのかもしれません。
スカルパの二重靴はようやく足になじんだのか痛くならなかったですが、飛ばして歩きすぎた為か河童橋を出た頃から両足のつま先にマメが出来たようで痛くなってきました。早く靴を脱ぎたいと思いながら、足の裏への負担の大きい大股で歩き通す。
トンネル入口の少し手前左側には新トンネルの入口があり、右側には飯場があり、道路わきの石の上にザックを置いてヘッドライトを準備した。
釜トンネルを下る時には、登る時に感じていた以上に急に感じ、走ったら止まれないのではないかと思いながら下った。
入口のゲートまでは12〜3分で着きました。係員がいて工事車両を入れていました。
足の痛みもあるし、排気ガスのトンネルを1時間も歩きたくなかったので、車に乗せてもらおうと思って手を振るが、何台も無視されました。
自分はそういう場合は止まってあげようと思いました。乗せて下さった親切な方に感謝したい。
車に戻って少し飲み食いしただけで、11時半に出発。高山を過ぎた辺りから天気予報通りに雨も降り出し、それを予測して早く戻って正解だったとひとり自己満足していました。家には3時過ぎに戻り、ずっとパンばかりだったのでカップ焼きそばを作って食べました。(天女は仕事で不在)

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