娘に逢いにはるばると 黒部五郎岳

(撮影 平成15年 8月 1日)

今年もワンゲル部で長期山行をしている娘に逢う為に
はるばると三俣蓮華の天場まで出かけてきました。
(昨年→ヘトヘト・ニッコリ・ヘトヘト 悪沢岳

黒部五郎岳(2,840m)


ワンゲル部の下の娘が今年は北アルプスだと言う。
長期の縦走など学生時代以外ほとんど不可能だから
裏銀座にしたらと勧めておいた。
北アルプスの山はほとんど1泊2日から2泊3日で行けるが
黒部五郎岳や鷲羽岳、水晶岳は2泊3日でもかなり困難で
どうせ行くなら雲ノ平も一緒に回りたいと思うコースである。
勧めた理由のひとつは自分もまだ行った事のない山域であり
今年もどこかで娘達の一行に出会う山行をして
これらの未踏の百名山を登ってしまえば一石二鳥だと考えていた。

折立は有峰林道の通行時間制限があって早朝から歩けないので
最初は新穂高から登って三俣の天場にテントをたててから鷲羽・水晶を登り
翌日黒部五郎に登って帰る日程を考えていたが
この場合は1日目はかなり厳しいスケジュールとなる。
(2日間のコースタイムは33時間50分)
折立から太郎平小屋・黒部五郎と回って三俣蓮華の天場で幕営し
翌日鷲羽・水晶・雲ノ平と回って太郎平小屋に戻り折立に下りるほうが
周遊となりいろいろな所に行ける上にコースタイム的に若干楽になる。
(2日間のコースタイムは29時間20分)
(しかし薬師沢の下り・登りがきついので新穂高の方が楽かもしれません)

従って、折立からのコースで行こうと思ったが
問題は有峰林道の通行時間制限である。
6時の開門を待って林道に入った場合
登山開始が7時になってしまい天場に着くのが遅くなってしまう事である。
そこで31日は若干早退し、午後8時までに折立に入ってしまう事にした。

どうやって行くの
北陸自動車道を富山インターで下りて、41号線を南下し標識に従って立山方面に向かい、有峰口で右折して有峰林道へ入ります。

武生インターから富山インターまでは153.5km 1時間30分、富山インターから有峰口までは約22km 30分と計算した。インターを下りて有峰林道の入り口までの間に3ヶ所位コンビニがあるのは調査済みだったが、最初のコンビニで夕食と翌日の朝食、昼食のパンとおにぎりを買った。

【有峰林道の通行時間制限】
有峰林道の通行時間は午前6時から午後8時までとなっていて、メールで問い合せると「午後8時にはエンジンを切ってもらいます」とかで、入り口のゲートから折立まで約40分かかるので、ゲートを午後7時20分ごろには通過してください。」との事だった。
8時少し前にゲートに行ったときに通してくれないかどうかは分からないが、駄目だった場合には計画が駄目になる可能性が高いので、早退して19時15分ごろにはゲートに到着するようにした。
ゲートには無事19時10分頃に到着し、係員に聞いた所同じように言われた。標準で有峰湖まで約30分、折立まで約40分との事で19時30分以降は通過させてくれないのでないかと思われます。
今回のコースについて
【 1日目コースタイム 】合計13時間55分
折立→(5:00)→太郎平小屋→(1:55)→北ノ俣岳→(2:50)→黒部五郎岳→(1:40)→黒部五郎小舎→(2:30)→三俣蓮華小屋

【 2日目コースタイム 】合計15時間50分
三俣蓮華小屋→(1:00)→鷲羽岳→(0:50)→ワリモ岳分岐→(1:30)→水晶岳→1:20)→ワリモ岳分岐→(0:40)→祖父岳→(1:05)→雲ノ平山荘→(2:50)→薬師沢小屋→(2:45)→太郎平小屋→(3:10)→折立

【装備に関して】
コースが長いので急ぐ必要があり、装備は出来るだけ軽量化に努めたので、17〜18kgとなった。妻は10kgを少し越える程度だったと思う。

注意!!
このコースをテントをかついで1泊2日で回るというのは狂気の沙汰です。まともな人は考えません。
一般的にこのコースを回る場合、1日目太郎平小屋、2日目三俣蓮華小舎、3日目雲ノ平山荘、4日目折立に下りることになるのではないでしょうか。1日目に黒部五郎小舎まで行くのはかなりの健脚でないと無理です。しかも2日目は通常の1日分歩いた後に、無茶苦茶滑りやすい薬師沢へのきつい下りと太郎平への登りが控えています。(どちらも標高差約600m)ほとんど日光に照らされ続けるので暑さ対策も重要です。
駐車場
駐車場は有峰のゲートの手前にあり、31日の時点で既に手前の道路側に数十台駐車していたが、駐車場にもところどころにスペースがあった。ほとんどの場合、何泊かすると思われるので帰った車のスペースと思われる。)

駐車場が満杯の場合は駐車場を越えて進み、登山口の手前を右に進むともっと広い駐車場があり、空いている場合が多いのでここを利用すると良いと思います。
右の写真の左手は無料の広いキャンプ場となっていますが、そのさらに左が駐車場になっています。知らない人が多いのか、2日に戻ってきた時には道路に沿って遠くまで駐車の列が続いていました。

登山口から駐車場に戻る(2日17:47)
安眠対策
夕食は高速を走りながら済ますことにし、折立到着後は速やかに寝ることを考えていた。そこで、数週間前から安眠対策を考え準備を行っていた。

1、カーテンの取り付け
駐車場で寝ようとする場合、次々と入ってくる自動車のヘッドライトによって寝られない場合があるので、カーテンを取り付けられるように車内に工作をした。(カーテンレールと布はあったので、費用は340円で済んだ。しかし、結局は洗濯バサミでカーテンを取り付ける事にした。)
2.エアーベッドの購入
カー用品のカタログで9,800円と出ていたので、欲しいが購入するには高すぎると思っていた所、ホームセンターで同じものを1,980円で売っていたので購入した。同時にシガライターの電源で動かす空気入れも購入した。(780円)今までシートの凸凹で腰が痛くなった場合があったが、これで解消出来ると考えた。
しかし、実際はどちらも使用しなかった。
有峰の駐車場には自分の車がほぼ最後で、後は車が来ない事が分かっているので、他車のヘッドライトに照らされることがないからカーテンは必要ないと判断した。(また片付けるのが面倒)
エアーベッドは事前に空気を入れて寝てみたが、フワフワしすぎる上にビニールの臭いがして気分が悪くなったのでどうしようか考えていた。布団だけで折立まで寝ていた妻がこのままで良いというので、結局布団の下に敷いたエアーベッドにエアーは入れなかった。(折角、電動エアーポンプまで買ったのに・・・)

ビールを2本飲んで時計を午前4時にセットして寝た。やはり、自分にとって一番の安眠対策はアルコールであったようである。妻は「いつでも・どこででも・いつまででも」車の中で安眠出来るようである。(毎日が慢性的な睡眠不足のためであろうか。口でも言うけど感謝しています!)
登山口
ほとんどの車はすでに登山していて空車になっているか、あるいは早朝の出発に備えてすでに寝ているためか、とても静かでぐっすりと眠れた。
時計のアラームが鳴る前に目が覚めていたが、4時のアラームと共に起きて準備を開始。
外に出てみると、すでに何組かのパーティは出発寸前の格好をしていた。おろしそば以外に、妻が食べきれないという幕の内と野菜サラダの残りも食べ、装備の再確認をしてドアに鍵を掛けて出発。
バス乗り場の置くが登山センターの広場でその右手のトイレで用を足した。こでに水を補給出来ると思っていたが、登山センターの横の蛇口には飲めないと書いてある。走ってキャンプ場の流しまで行ったがそこも同じように書いてある。諦めて戻った所にセンターの人が軽トラックで入ってきたので、尋ねたところ、「大雨の後などは濁って飲めないが流しの水が飲めますよ。」との事だった。
従って、水は自宅で詰めてくる事をお勧めします。
ペットボトル2本に水を詰めて(別途前日朝に冷蔵庫から出してクーラーバッグに入れておいたアクエリアス3本とビール2本はまだかなり凍っていた)5時ちょうどに出発。

登山口 4:52
奥の光っているのは登山センターの自販機
ジュースが120円で売っているのに感激!
写真では暗いがランプなしで充分明るい
三角点
先行の何組かのパーティを次々に追い越して、5:56三角点に到着。ここで時間をかけてしっかりと日焼け止めを塗った。

妻は三角点が何かも知らず、ここへ帰ってくるまでこの白い標柱を三角点だと思っていたらしい。また何のためにあるのかも知らなかった。ここを帰る時にそれがわかったので、歩きながら「三角点とは2箇所の距離を正確に測定し、そこからの角度を正確に測定し、三角形の合同を使って3点目の位置を確定し、それを繰り返すことによって日本全土の測量をしたその基準となったのがこの三角点で・・・」とtomoruさんの質問があって調べた事も含めて妻に説明した。
「夫と一緒に山に登ると、いろいろと勉強になって良いだろう。」と自慢したが、妻は同意はしなかった。疲れと足底の痛みでそれどころではなかったようである。



まだまだ元気一杯
ここからはほぼ遮るもののない登山道となる
太郎平小屋
太郎平小屋には7:25に到着。まあまあのペースである。しかし、2年前にここまで1時間半を切って登ってきたことを妻に話したが、自分でも信じられないような気がした。
小屋の前の広場にはたくさんの人がたむろしていた。
   
        薬師岳を望む
 
   雲ノ平・水晶岳方面を望む
今年は覚悟をしてもらおうと、中央の台地が雲ノ平、その向こう左奥が水晶岳で、明日はあそこまで行って雲ノ平を通って帰ってくると妻に説明したが、妻の反応はなかった。どんなに遠くてもどうせ歩かされるのでしょうと思っているようであった。ここからの水晶岳はとてつもなく遠く、自分でも本当に1泊2日で歩けるのだろうかと思った。
太郎平小屋2
妻が空のペットボトルを持ってトイレの場所を聞きに小屋へ入ったら、水を入れてくれたと言って出てきたが、飲料水は小屋の左手に流しっぱなしとなって出ている。(帰りに生水は飲まないようにと書いてある事に気がついたが、最近は何でも責任を追及されるので、その予防の為書いてあるのではないかと思います。)
その先は太郎山方面への登山道が続くが、トイレは小屋の裏手にあり、裏手一帯では工事をしていた。トイレから戻って、折立からの途中で追い越した後、ほとんど遅れずに小屋までついて来た30歳位の夫婦連れの人と話をした。大町の人で山を相当やってきたが、最近は・・・と言っていた。奥の廊下から赤木沢を登って明日折立に下りると言っていた。奥さん?はまだ若くかなり年の差があるように感じたが、この男性は話す度ににっこり笑って感じが良い人だった。

薬師の鐘は澄んだきれいな音がした。
妻がたたいた音を聞いて
大町の2人連れもたたいた。
北ノ俣岳 2,661m
北ノ俣岳まではお花畑が続き、太郎平小屋から軽装でお花畑を見に来て戻る人もいる。お花畑はほとんどが白い花である。チングルマは花が終わっているところもあった。

太郎平小屋から見ると余り高低差がない稜線の散歩道のように思っていたが、実際歩いてみると結構アップダウンがあった。このコースは太郎平小屋から黒部五郎小屋までが遠く、かなり地味なコースと思っていたが、黒部五郎の肩までで30〜40人に出会った。人に出会ったり、前方に人が見えるのはやはり何かしら安心感を感じさせてくれるものである。

黒部五郎小屋から三俣蓮華への間がしばらく樹林の間を歩く以外は、雲ノ平を経て薬師沢への下りが始まるまで、ほとんど遮るもののない登山道が続きますので、日焼け止めや日射病の対策が必要です。

北ノ俣岳よりの薬師岳 9:01
妻は歩いているときはタオルをしているが、
撮影をするときはあわてて取る。
自分でもカッコワルイと思っているのだろう。
赤木岳 2,622m
   
          9:28 赤木岳
この付近では先行するパーティや黒部五郎岳から来るパーティに何組も出会うので、妻と去年の南アルプスとはぜんぜん違うなと話した。
 
ここまで来ると黒部五郎岳がかなり近くなってきたが、ここから一旦かなり下るのが損をした気分になる。
黒部五郎の登りもそれほど急な感じはしない。もうここからはこまかくギザギザに登山道があるのがわかる。
野口五郎岳の肩
野口五郎岳の登りは余り急ではない斜面を短くジグザグに登っていく感じで苦しくは無い。でも鞍部からの標高差はかなりあるので途中で休んでいる人も多い。
やがて肩に到着。大勢がここで休憩している。頂上はここから右手にほんのちょっと登った所にあり、数人の人がいるのが見えた。
我々もザッグを降ろして頂上へ向かう。

頂上から肩に戻る途中に撮影
黒部五郎岳 2,840m
カメラとサイフだけを持っての登りなので身が軽い。スイスイと登って数分で頂上に到着する。

黒部五郎岳を含め今回登った山には、ちゃんとした頂上の標識がない(あるいは剥がされたようになっている)のはなぜだろうか。登山の記念に持ち帰る不届き者がいるのだろうか。そういう所も登山者が多い北アルプスの特徴なのかなと思った。
ガスで展望は今一であった。
肩に戻ってクーラーバッグに入れておいたビールを出した。前日の朝冷蔵庫から出したのであったが、今朝まではクーラーバッグを二重にした中に大量の凍らせたアクエリアスなどといっしょに入れてあって、まだかなり凍ったままを小さいクーラーバッグに入れてきたので、ちょうど飲み頃の冷たさを保っていた。(折立からはるばるとかついできた貴重なビールであった。)ここでビールを飲んでいる人はいないので、かなり優越感を感じ、飛び切りのうまさであった。

最初の百名山 ヤッタね 11:40
最近、妻がポーズをとるようになった?
カール
肩からカールに下りる登山道はかなり急で、下に下山者がいるときは落石に気を使ってください。自分達の歩き出したすぐ後に数人のパーティが続いて下りだしたので、妻を急がせて差を開いた。

黒部五郎のカールは気持ちの良い所とガイドブックで紹介されている。眺めは良いし大岩の上で昼寝をしていると本当に気持ちが良い所のような気がする。のんびりと休んでいる人が多い。
雪渓はまだたっぷりあって、雪渓のすぐ下で流れ出てくる水を飲んだ。この水場はガイドブックには「?」が付いているので雪渓の消長によってはなくなるものと思われる。

雪渓の溶けた水をペットボトルに詰める
黒部五郎小屋
カールから小屋までは案外遠かった。いくつもの沢を横切ってようやく小屋が見えたが、気持ちの良さそうな所に建っていると思った。
  
三俣蓮華へは、この小屋の後ろの山を登る必要があります。
 
この小屋の右手角に方向が書いてあり、右手のキャンプ場の方へ道が続いているので、キャンプ場を抜けて進んだら、標識に「黒部五郎岳」と書いてある。おかしいと思って戻り、幕営中の人に尋ねたら小屋の後に道があると答えた。戻ってみると小屋の陰になりそうなところに標識があり、左;三俣蓮華岳とあった。
今回も地図は仕舞ったままだったのが失敗の元であった。
三俣蓮華小屋への道
黒部五郎小屋の後ろからはかなりの急登が続き、長旅をしてきたこともあって疲労感が高かった。まだかまだかと思いながらやっと登りきった所で踏み後が3方向に分かれていて、1方向(右方向)にだけ三俣蓮華岳と出ている。ガスっていて山は見えなかった。三俣蓮華岳には登らずにトラバースするつもりだったので、方向指示板のない方へいくのかなと思っていると(地図を出していない)三俣蓮華岳のほうから単独行の男性が下りてきたので尋ねたら、この人は三俣蓮華の小屋から来て、この途中にトラバースと山に登る分岐があるとの事だった。
進んでいくと分岐があった。頂上はガスで見えなかったが、分岐のすぐ下で雪渓をトラバースして、先に進んでからの尾根の登りがまだ案外あるような感じだった。
尾根を登りきってもまだ小屋は見えなかったが、もう登りは無く歩いているとやっと小屋が見え、妻も元気が回復した。
「やっとお母さんの大事な大事な娘に逢えるね。」と言うと「やっとお父さんの大事な大事な娘に逢えるね。」と返された。
そこを下りた所に雪渓があり、進路に赤く色が付けてあった。

三俣蓮華小屋天場に到着
小屋の手前に天場が広がっていて、思い思いの場所にぽつんぽつんとテントが立っている。(到着は15:30頃だったか?)
ユミちゃんらはどれかなと言いながら歩いていると、水場の近くの2つ並んだテントの所にいた女の子が、驚いたように挨拶をして(去年も会っていたので)テントの中にいた娘を呼んでくれた。だいぶ前に娘と男性3人のパーティだとメールで聞いていたのでとまどったが、その後パーティの変更があり男女2人づつとなり、もう1つの別ルートのパーティがちょうど一緒になったとの事だった。
少しでも早くテントを立てて寝たいと思っていたので、ちょっと話をしただけでテントを立てる場所に移動した。ここは水場の近くで良い所なので、娘たちのテントの奥の少し下がった所にテントを立てた。もし、風が出ても避けられるだろうと思って。(使用されていない昔のトイレが近くにあったが、臭くはなかった。)
テントを立てている間に妻が受付に行き、ビールを買ってきてもらった。
やれやれ、カンパイ!
ビールを飲んで、靴を脱いでテントマットの上に横になり、開放感に浸った。

暗くなる前に記念撮影

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