鬼無里(きなさ) 「鬼無里」という地名を知ったのは20年以上も前のことである。 まだ北陸自動車道か開通していない時代に新潟に行く時だった。 国道8号線が土砂崩れで通行止めとなり しかたなく糸魚川から南下して長野回りで新潟に向かう途中 偶然に鬼無里を通過した。 読んで字のごとく、「鬼の無い里」とはどういうことだろうと不思議に思った。 ちょっと調べてみるだけで伝説の宝庫だとわかり いつかは訪ねてみたいと考えていた。 6月初めごろは例年芦原で同窓会があるので 山を登ってから参加するようにしているが この時期に登山するとなると梅雨をさけて北の方の山となり、 帰りの移動時間も考慮して山を選択すると限られてくる。 ということで雨飾か高妻かということになり、 雨飾りではあんまり歯応えがなさそうなので ちょっときつそうだが戸隠山から高妻山のコースを決めた。 あとは天候であるが、読売新聞の天気予報では 11日、12日の天気予報は降水確率50〜70%であったが 天気図と雲の動きを見ている限り晴れ間がきそうなので 12日夜から準備をしていたが 13日朝起きて確認すると降水確率は20% 天気予報は曇りのち雨だったので車に装備を積み込んで仕事に出勤した。 |
どうやって行くの? 時間だけ考えたら、上越から上信越道を通って信濃町インターで降りて戸隠へ向かうのが一番よさそうであったが、金欠サラリーマンとしては高速料金が少なくてすむコースを選択。 糸魚川から国道148号線を南下して白馬から鬼無里に入り戸隠へ入る事にした。若干距離も短い上に、高速料金は1,400円も違う。(普通車:鯖江→信濃町6,550円、→糸魚川5,150円) さらに今回は,高速料金が安く(約2割)燃費が良くて山道でのすれ違いや駐車の楽な妻のムーブで行く事にした。往復650kmと考えると、ステップワゴン65リットル、ムーブ36リットル(普段の使用で17km/Lなので18km/Lと想定)となり、合計で5,000円程安くなる計算であり金欠サラリーマンである自分にとっては最高の登山の足と思われる。 |
【 新型ムーブ 】 学生で金沢にいる娘に車を譲って以来、妻はホンダの軽トラックで我慢していたが、デフの騒音がひどくなった事もあって3月に車を買うことにした。トヨタカードのポイントが数万ポイント程あって、毎月ポイントが消えている状況であり、妻は維持費を考えて軽自動車でないと駄目と言うので必然的にダイハツ車となる。 自分は登山等への利用を考えアトレーワゴンを強く勧めていたが、スタイルが気に食わないと言う。(車両価格が130万円を超えるという事も要因だったと思う。)各自動車誌で絶賛のムーブを試乗した所、妻は非常に気に入ったのでムーブに決定した。タイプはLの4駆、燃費を考えマニュアルシフト、オプションの跳ね上げ式バックドアを注文した。(ムーブの横開きバックドアは理解出来ない。跳ね上げなら販売台数が5割はアップするのではないかと思うのですが・・・) |
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ムーブ車内泊 | ||
ムーブは前席のヘッドレストを外してシートバックを倒すと後席とフルフラット状態が作れ、長さ170cm余りのベッドスペースが出来る。試乗時に寝てみると案外いけそうだったのも購入要因であった。。 鯖江で高速に乗る前にガソリンを給油。3月購入でまだ走行2,400km余りのムーブにとって初めての長距離遠征である。途中で最高速にも挑戦、余裕を残して100km+αを確認。最初はやはり軽はノイズが大きいと思っていたがすぐに慣れた。予定通り、糸魚川で下りて白馬へ。白馬の手前のコンビニに寄って食料を調達、鬼無里へ向かう。急な上りと狭い道の急カーブの連続であるが何とか戸隠へ到着。このルートは絶対お勧めできません。信濃町インターから戸隠へ入ってください。 濃いガスの中、目的のキャンプ場の駐車場を探しまわってようやく到着。すぐにシートをベットに整え、缶ビールを2本飲んで11時半頃寝ました。 |
ムーブのベット状態 シートの凹みには小さな座布団を敷き、その上にさらに通常サイズの座布団を敷き凸凹を調整し、毛布・シーツを重ねた上に寝袋をして寝ました。凸凹はまだ少し残っていますが腰が痛くなることはなかったです。 |
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駐車場 | ||
昼、標識がよくわかる時ならば案外簡単に戸隠キャンプ場の駐車場に行くことは簡単だと思います。 登山者用の駐車場は戸隠牧場入り口の所にあり、約100台駐車可能と思われます。ただし、ここは高妻山の登山口であり、通常戸隠山に登る場合は一般に戸隠神社奥宮の駐車場を利用します。 夜中に数回目が覚めた以外3時15分まで良く眠れましたがそれからは眠れませんでした。計画では4時半出発と考えていたので、4時から起きだして準備を始めました。そのうちに朝早く来た人が出発して行き、追いかけるように4時半きっかりに出発しました。 |
夜駐車した時は2台だけでしたが 早朝に3台来て、 戻ってみると30台位になっていました。 |
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勇んで出発 | ||
戸隠キャンプ場の駐車場に駐車したのは、ここから「ささやきの小径」を経由して戸隠神社奥宮(登山口)にいけると事前に地図で確認していたからでした。 出発時に地図を確認せずに牧場の中に入っていったら、案内標識に戸隠の名前がない。あわてて引き返し駐車場を越えキャンプ場の入り口まで1km程下ってみると、そこの案内図には駐車場の所がささやきの小径入り口とあり、地図を取り出して確認するとやはりそうなっている。 という事で、もう一度駐車場まで引き返すと、なんと車を停めたわずか奥に案内看板がありました。 もうミスをしないようにと、地図をポケットに入れて再出発しました。 |
約3km、30分ほどロスをして 結局5時05分再出発となりました。 |
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ささやきの小径 | ||
ささやきの小径は最初は戸隠キャンプ場のバンガローの間を横断するように進む。下は石畳状です。 バンガローを過ぎると快適な森の中のハイキングコースとなる。が「熊出没注意!」の標識にハイキング気分も吹き飛び、岩場を登りきるまで使わないつもりだったストックを取り出して、いざ遭遇した場合の武器にしようと持って歩きました。 しかし、ささやきの小径はクマどころか人にも逢わず、何事も無く無事通過しました。 |
ささやくの小径を歩き通した所 途中、何ヶ所かこのような標識が出ています |
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随神門 | ||
ささやきの小径の終点は隋神門です。 ここは戸隠神社奥宮参道のほぼ中間点にも当たります。 隋神門には、右大臣・左大臣が祭られています。 |
5:31 撮影 |
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杉並木 | ||
参道は両側に杉の巨木が並び敬虔な気分になります。 奥社参道杉並木に関する案内標識によると、 戸隠山顕光寺(現神社)は慶長17年(1612年)一千石の朱印地を拝領したのを契機に顕光寺を中心に大門通りを整備し、坊をその側に集め、参道や境内には植樹し杉並木を作り一山の整えたとあり、樹齢約400年です。 |
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山伏 | ||
隋神門から奥社まではコースタイム20分となっています。すこし登りの傾斜がある参道を歩きながら、こんな筈ではなかったと息ばかり上がってスピードの出ない自分の歩きにあせりを感じ始めていました。 その時、法螺貝が鳴り響いてきたので、いかにも山岳修行の地らしいと期待を込めて進みました。 山伏姿の人がこれから下山するところでした。正面からの撮影は怒られそうな気がしたので、山伏が通り過ぎてからカメラを取り出して写真を撮りました。 右手の社務所の下が戸隠山への登山口です。 |
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奥社 | ||
奥宮は天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩窟にお隠れになった時、無双の神力で岩戸を開けた天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が御祭神である。 階段を上がる前に手水舎で身を清め安全を願うことにする。 【正しい手の清め方】 @右手に柄杓をもって水をくみ、半分をつかって左手を清める A左手に持ちかえて残りの水で右手を清める B右手にもちかえてもう一度水をすくう C半分を左手にため、口をすすぐ D柄杓を立て、柄を洗う という事らしいが、口も清めると聞いていたので水をふくんで口内を清め、ついでに2杯水を飲みました。 奥宮には記帳があったので記入しましたが、直前は仙台のご夫婦でした。(後で出会いました) |
紅葉の戸隠は有名ですが 雨に濡れた新緑もきれいでした。 |
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九頭竜社 | ||
奥社隣りには九頭竜社が建っています。九頭龍社は農耕神であり、戸隠信仰の中心的な木造の社で、豊かな水をつかさどっています。 いつの頃からか、歯の守護神としても名高くなったという事です。 |
九頭竜社 |
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登山道入り口 | ||
社務所の下へ戻って右側に登山道の入り口があります。 大きな標識に八方睨みコースが説明されています。 |
登山口 5:48 |
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50間長屋 | ||
登山道入り口からかなりの急な登りが続く。またしてもこんな筈では・・・と思いながら喘ぎつつ登る。確か尾根に出れば楽になると書いてあったのを思い出して頑張りました。ガスで尾根に出たのかどうかも分かりませんでしたが、傾斜が楽になりました。そのうちに鎖場が現れましたが、鎖に頼るまでもなく、何だ案外たいしたことはないじゃないか・・・と思ったのでしたが・・・ 直前に記帳していた仙台の夫婦が休憩している所に出会いました。聞くと昨日夜8時半に仙台を出発して、今日高妻に登って明日雨飾に登って帰るとの事。「自分も同じコースですが、今日の夕方、芦原温泉の宴会に出なくてはいけないので・・・」と言って先に進みました。 やがて50間長屋に到着。垂直の断崖を刳りぬいて(?)通路のようになっていますが、登山道はその左手に登ってくるので眺めて通り過ぎるだけです。 |
50間長屋 6:22 |
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百間長屋 | ||
百間長屋(6:25) 左側を雨の雫が流れ落ちていたが百間長屋の通路の土はホコリが立つ位に乾いていました。 |
百間長屋を過ぎるとすぐに鎖場があり、 鎖場を登った所から百間長屋を振り返る。 |
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鎖場 | ||
百間長屋を過ぎると鎖場の連続となる。手掛り・足掛りがあると書いてあったので鎖など頼らずに登りきる予定をしていましたが、結構きついところがあって踏ん張った瞬間足が攣ってしまい、鎖を使って登りました。となるとタブーは必要ないので、それ以降は結構鎖につかまりながら登りました。 |
(上から撮った所) 左の写真で分かるように結構凸凹があり、 手がかり・足がかりは豊富ですが 案外もろそうな岩がはまっているので。 粋がらずに鎖を利用するほうが安心です。 |
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蟻の門渡り | ||
何度も鎖場を通過します。途中で「清子さん、やすらかに眠れ」と書いた板が石の間に埋められていました。戸隠では墜落もあったと書いてあったので遭難者に一人であろうか。 まもなく蟻の門渡りに到着。聞いた通り幅数十センチの切り立った尾根がうねっていました。ガスの為に両側の崖の下のほうは見えませんが、かえって底なしの高さのようで怖い気もしました。 「さあ、気合を入れて渡ろう」と思って、よく見ると右手5〜6m下に鎖が張ってありました。しかし、ここに至ってはそこまで下りるのも怖い。思い切って歩き出しました。 |
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剣の刃渡り | ||
蟻の門渡りの途中で立ち止まって写真を撮ろうとデジカメをザックのポケットから取り出し、ふっと目を足元にやると恐怖感に襲われ足に思いっきり力が入ってしまいました。 次の瞬間足が攣りました。しゃがむにもしゃがめない蟻の門渡りの上、恐る恐るふくらはぎの筋肉を伸ばして回復に努め、どううにか回復。 最後は足の置き場もないような狭いナイフリッジ、ここが剣の刃渡りです。こんなところで再び足がつったら・・・想像しただけで怖い。辺りには誰もいないのを幸いに、四つんばいになって岩に取り付き何とか通過した。 渡りきった時、下のほうから音楽が聞こえてきました、ちょうど7時でした。 |
剣の刃渡りの全景(上から)7:02 |
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八方睨み | ||
剣の刃渡りを過ぎると間もなく八方睨みに到着。 ここは名前の通り、絶好の眺望ということですが、何にも見えません。奥の岩の所も曰くがありそうでお賽銭が並んでいました。 剣の刃渡りから登ってくると登山道はしっかりと直進でついていますが、うっかりそのまま直進すると西岳に行ってしまいます。 右手の標識の手前に笹の埋まりそうに右後ろに戻るように一不動への登山道があります。 |
7:07 |
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戸隠山 頂上 | ||
八方睨みから一不動までのコースは、右側が戸隠の断崖で登山道を踏み外さないようにとガイドブックには書いてあります。登山道は主に笹薮の中か断崖沿いです。 戸隠山の頂上の標柱は倒れていて、なんにも無い頂上でした。 ガイドブックには九頭竜山(1,883m)の山頂は知らずに通り過ぎてしまいそうだと書いてありましたが、それらしきピークはありましたたが標識は見当たりませんでした。この頃ポツポツと雨が降っていました。 |
戸隠山(1,904m)7:17 |
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戸隠の断崖 | ||
一不動までの登山道で藪の中でないところは、ほとんどがこのような断崖絶壁の上です。 登山道には至る所に猿のものと思われるウンチがありました。事前に読んだホームページで、岩場で猿のウンチをつかんでしまい臭い思いをしたと書いてあったので注意してきましたが、踏まないように注意願います。 |
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一不動避難小屋 | ||
何回も小さな上り下りを繰り返していると、やがて目の前に一不動避難小屋が現れます。(8:12) 中は十数人位が寝られそうな広さですが、トイレは無く、水場も戸隠牧場のほうへ10分程下る必要があります。しかし、ここに泊まる登山者も多いらしい。 ここが高妻山と戸隠牧場との分岐です。 |
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高妻山へ | ||
ここまではコースタイム5時間25分(エアリア妙高・戸隠/雨飾による)、自分では遅い遅いと思っていましたが3時間07分と案外早く着いたものです。 しかし、充分ばてていました。 以下は 高妻山 の項に続きます。 |