早月尾根からの剣岳

(撮影9月 8日)

山登りをする者全てが憧れる岩と雪の殿堂「剣岳」
黒部アルペンルートの混雑、その登山ルートの混雑が嫌いなのと
その場合はどうしても1泊2日はなってしまうので
早月尾根からの日帰りを以前から考えていたが、
剣の名に畏れをなしていたのでなかなか実行出来なかった。
             早月尾根からの剣岳(2998m)
早月尾根コースは標高差約2,200mで日本アルプス3大直登と言われている。
途中には早月小屋(標高2,200m付近)があるのみで水場さえもない。
コースタイムは登り8時間10分、下り5時間40分である。(昭文社登山地図)
また、岩場もそれほど困難な所もなく、しかも混雑とは無縁である。
往復はそれほど困難ではないと考えていたが、運動不足による体力の低下で
早月小屋からの下りは、渾身の力を振り絞っての下山となった。

どうやって行くの?
福井からは北陸自動車道の立山インターで下り、一般道を馬場島の青少年旅行村に向かいます。(約27km45分)馬場島手前1kmほどは車のすれ違いが困難な場所がありますので、譲り合って通行して下さい。
青少年旅行村には数カ所に駐車場があり、合わせて100台以上が駐車可能です。
なお、剣岳早月尾根の日帰り登山に関しては、「百名山日帰り」を参照させて頂きました。
7日はほぼ1日中雨で、夕方頃雨が上がった。
行くかどうかの判断は、例によってインターネットでの最新情報の確認で行った。
ヤマケイの山岳気象予報にちょうど剣岳があり、それによると7日午後4時更新の予報で、8日9時までは曇り、12時からは晴れ、富山の予報では降水確率10%という事で行くことに決定した。
午後9時に家を出発した時は一面の曇り空であったが、金沢を過ぎた辺りから晴れて月夜となった。
登山口
青少年旅行村の駐車場から約200mほど舗装道路を登ると、左手に剣岳への登山口があり、この付近がやや広くなっているので、駐車場として利用されています。12時少し前に着いて、一応車で上ってみたら、1台だけ駐車しているだけでしたが、後からきた車で発車出来なくなることを恐れて、下の正規の駐車場に止めました。青少年旅行村の駐車場にも1台駐車しているだけでした。
なお、下山してみると登り口付近には車が10台以上駐車していて、この登山口の反対側の河原のほうも駐車場となっているみたいで、キャンプに来た人の車が見えました。
駐車場に車を止め、ビールを飲んですぐに寝た。数人の大きな話し声に朝が来たのかと思って飛び起きたら、まだ1時半で、その人達は騒ぐだけ騒いで車を動かしてどこかへ行った。
今度はなかなか寝付けずにいたが、気がついたら5時を回っていて、辺りは明るくなっていた。あわてて飛び起きて、上市のコンビニで買ったおにぎりを食べながら準備をした。
しかし、あわてた為に用意していた飲料水のペットボトル(500ml)を2本忘れてきたのに気付いたのは、頂上に近づいてからだった。

登山開始
朝起きたとき、駐車場には車が4台増えていたが、1台を除き出発した後だった。
その人は上越市から来たということで、ここからの日帰りは3回目だと言って、小さなザックを側において、靴紐を締めていた。待たずに先に出発した。
上の登山口への入口の所も、車が1台増えていた。

5時25分、登山開始
 

登山口にある「剣岳の諭」(5:24撮影)
有名な「試練と憧れ」の碑

ガイドブックなどでも有名な「試練と憧れ」の碑は、早朝では暗くてうまく撮影出来ないように思ったので、戻ってから撮影することにしたが、下山途中でデジカメのバッテリー残量が少なくなって心配したが、無事撮影出来た。

今回は日帰りではあったが、自分の登山技量では剣の岩場の通過に思わぬ時間を費やす事も考慮して、ビバークの装備一式も担いで登った。
 

撮影15:02
早月尾根の急登
試練と憧れの碑の横を進むと、すぐ道が2又に分かれていますが、左には進まず右の尾根に取り付きます。ガイドブックには「急登」の文字が躍っていますが、さほどの事はありません。
いつものようにハーハーゼーゼーのペースで3人の人を追い越した。1人目は50代の男性で縦走すると言っていたが、ザックはそれ程大きくはなかった。2人目は40代の女性で日帰りすると言った。
3人目は富山市の30歳の男性で、登るスピードも自分とそんなに違わなかった。運動不足による体力低下により、いつものハーハーゼーゼーぺースでは自爆してしまいそうに感じたので、それから後は、彼と一緒に歩くことにした。
ほぼ1時間に1回、キチンと休憩をとるので、自分も休憩して話をした。女の子が2人でマラソンもしているなど共通点が多かった。(自分の場合、マラソンをしていた、と過去形で言わなければならないが・・・)

富山市のTさん(30歳)
6:30頃 15分位休憩しながら話をした。
標高の標識
標高1,800mの標識。
登山道には200m毎に標高の標識があり、険しい尾根道を登っている登山者をなごませてくれる、とガイドブックに書いてあったが、この標識の高度はあまり信用出来ないらしい。

     
早月小屋
この長大な早月尾根コース唯一の小屋であるが、水場がないため雨水を貯蔵して使用している。途中の登山道から小屋の屋根が見えたのでもうすぐだと思ってからが結構長かった。

小屋には8時18分到着。
小屋の右手にベンチがあり眺望が良いので腰を下ろしておにぎり等を食べたが、すぐ横から発電機の排気ガスが排出されていて、気分が悪かった。
   

撮影8:15
左手の小さな建物はトイレです。
登山道より
早月小屋までは、登山道はほとんど樹林の中だったが、小屋を過ぎると背の高い樹木はほとんどなくなる。
撮影8:59 2,450m付近から頂上を望む
標高2,400m付近では尾根を巻いたりするので、若干の下りがあります。

撮影 9:11 
2,800mの標識
この付近までは、写真を撮っている間に富山のTさんから離れて、そのうちに追いつくという状態の繰り返しであったが、Tさんが疲れが出てきて休憩が頻繁になったので、先に進んだ。
撮影10:10
剣岳頂上
ガイドブックには頂上付近には鎖場が多々あって、足下は目も眩むような絶壁であると書いてあった。鎖場は数箇所通過したが単に補助的な感じで、これから本格的な鎖場の難所になるのだと思い、岩陰に腰を下ろして休憩をした。
すると、駐車場で隣にいた上越市の人が来て「頂上まであと5分ですよ。」と言うので、それならこんなところで休憩している必要はないと、慌ててザックをかついだ。
すぐに別山尾根のルートとの合流地点に達し、目の前が頂上だった。
お賽銭を100円入れて、大学の休みを利用してヨーロッパ旅行(ザック一つで放浪)している娘の無事帰国を祈った。帰ってから妻に、「無事帰ってきたらお礼参りに一緒に行ってくれ。」と言っておいたので、いつか一緒に登ることになると思う。

頂上着 10:48
頂上には6〜7人の人がいるだけだった。思い思いの場所を陣取って、昼食を食べていた。

20代と思われる男性がガイドを伴って登山していた。その男性から先生と呼ばれていたガイドの男性は、今日のこれからのルートについて説明していた。
Tさんも15分程遅れて登ってきた。
一番向こうの人が日帰りは3回目という上越市の男性。神奈川県のグループに、天候も見極めて来ているので、雨具なども一切持っていないと話していた。

神奈川県から来たという女性2人とリーダーの男性
頂上からの展望
残念ながら頂上に到着する少し前からガスが出始めていた。従って、残念ながら槍・穂高岳方面は見えなかった。

上から見ると別山尾根方面のほうが険しくて大変そうに思われた。カニの横這いとかいう難所もあるようで、コースの長さを除けば、早月尾根の方がはるかに難易度は低いのではないかと思う。
登ってきた早月尾根を見下ろす。
ガイドブックでは「長大な」という形容詞がつくが、案外近いところに小屋が見える。

一瞬ガスが薄らいで正面の山が見えた。
針ノ木岳だと聞いた。

源治郎尾根 どうやって下りるのだろう?

登山路
クサリ場は何カ所かありますが、特別危険な個所はありませんでした。ただ1ヶ所(1ステップのみ)だけ、岩に打ち込まれたボルトとクサリに頼らなければならない所がありました。

何度か尾根を横切るので、下山時には注意が必要です。(実は下山時、10m程間違って岩場を降りたが気が付いた。)マークを確認しながら進みましょう。
花・木の実

木イチゴ
一つ取って食べたがスッパイ味だった。

ナナカマドの実
その他
下山中、(登山口のすぐ近くで追い越した)縦走すると言っていた中年の男性に2,400m付近で出会った。向こうも顔を覚えていて挨拶したが、バテたと言っていた。
その時は余り思わなかったが、今考えるとこの時間(12時45分頃)でここまでしか来れなくて、しかもバテているのなら、頂上を越えてどこかの小屋まで行くのはとても無理で、遭難しなかったか心配である。
このコースで日帰りするには、早月小屋まで(コースタイム4時間40分)を休憩も入れて4時間半以内に到着して、余裕充分である事が最低条件と思われる。

カシオのプロトレックによる温度と高度の記録
(出発時特に高度を合わせていませんので、最初から誤差があります。)


飲料水は、自分の場合途中まで3リットルあると思ってたくさん飲んでいたので、後で足りなくなった。2.5リットル以上あれば良いと思いました。(早月小屋で水は得られません。もし貰えても溜まり水なので煮沸が必要です。)

【今回の装備】
食料:例によって安倍川餅1パック(398円)レーズンバターパン1袋(168円)朝食の残りのおにぎり2ヶ
飲料:アクエリアス500ml×1、CCレモン500ml×2(たまたま1.5Lボトルがあったので500mlに入れたが、登山の飲料には適さなかった)水(よのき清水)500ml×1、缶ビール350ml(凍らせてクーラーバッグに入れ、登る時はタオルにくるんでザックに入れた。頂上ではほぼ適温であった。)
(アクエリアスと水各1本をザックに入れ忘れた。)
その他:ゴアテックス雨具上下(絶対降らないと思ったが、防寒具兼用として持参。)長袖シャツ(ウール100%)とズボン(トレパン)、ウールセーター、ツェルト、ステッキ、エマージェンシーシート、携帯蛍光灯、デジカメ(カシオQV-2800非常食(チーズソーセージ・1口羊羹)ラジオ、使い捨てカメラ、ロープ約10m【太字のみ利用】
服装:ランニング用の短パンとTシャツ(メッシュ)
早月小屋からの下り
何故こんな苦しい・・・
早月小屋に到着した時、小屋の前のテーブルで10人程が声高に談笑していた。その前を通ってベンチに行く気になれず、反対側にあるトイレを借りただけで通過し、その先の小ピークで写真を撮る為に小休憩した。水が少ない事と結構疲れている事を自覚し、早く戻ってクーラーバックにあるビールを飲んで少し寝ようと考え、下山を急いだ。
大山の頂上から25分で全てを走り降りた経験もあり、膝には自信があったが、筋肉疲労が溜まっていてとても走る事は出来なかった。
最後は、ともすれば崩れそうな膝を意識しながら渾身の力で下山した。冷や汗だろうか、Tシャツは水をかぶったようにびしょ濡れとなった。
3時1分、ヘロヘロになって試練と憧れの碑の所へ戻った。下の駐車場へ戻る途中のキャンプ場の炊事場で水を飲んでやっと一息ついた。
車に戻ってザックを降ろし、もう一度炊事場に戻って、びしょ濡れのTシャツを水洗いして車の中に干したのが限界だった。ビールとジュースを飲んで、布団の上に倒れ込んだ。

自分は何故こんな苦しい登山をしているのだろう、と自問した。「試練と憧れ」の言葉を思いだして、死ぬか生きるかの試練は出来ないけれど、自分の全力を出し尽くして山に登り、自分を鍛錬するのが最も自分らしい山登りだと思った。

太ももの筋肉痛は水曜日まで残った。

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