久しぶりの家族登山 恵那山

撮影:平成16年4月11日

恵那山(2,191m)

恵那山の下を中央高速の恵那山トンネルが通っている。
南アルプスに行く場合に必ず通るので、
意識はしていたが、高さが低く後回しにしていた。
あわよくば、どこかに登った帰りにでも登ろうかと考えていた。

4月11日は妻も休みだと言う。
3月末にあった妻と一緒の休日はじゃがいも植えをしたので、
今度はどこかへ行こうかと考えた。
九州遠征以来、妻も山へ行くのを少し楽しみにしている様子でもあり、
この時期に行ける未踏の百名山を物色して恵那山を思い立った。
早速Webで調べてみると
この時期に実際に登った報告があり、これなら登れると思った。

京都にいる次女を誘うと
土曜日は午後11時までバイトがあるとの事で
翌朝7時14分に米原駅で待ち合わせをして行く事になった。


どうやって行くの?
昭文社の「日本百名山を登る」には神坂峠からぐるっと尾根伝いに恵那山に登るルートが紹介されている。
しかし、Webで検索した所、数年前に広河原コースが出来て、これが3時間程で登れる最短コースである事を知り、このコースからの4月3日の登山報告も見ることが出来たので、このコースから登る事にした。
中央道園原インターを下りて、すぐ左に曲がり、県道477号線をしばらく進むと3差路があり(観光案内板が立っているが、広河原方面の表示はない)右に進み橋を渡ります。村民グランドなどがあり小さな集落を越えると1車線の林道になります。路肩は崩れ易い所があるようなので、すれ違いには注意が必要です。
【山行参考資料】
恵那山を知る上では「@恵那山へようこそ」が質量ともに充実していて、ここでその時期の恵那山の登山道や残雪の状況を確認すると良いと思います。
この日、頂上の避難小屋の所で偶然にもこのページを作成されている足立尚哉さんの一行にお逢い出来た。(前宮ルートから登って来られたとの事であった。)なお、翌日のページには百名山ハイカーがこの時期登る山ではない旨の主張がされていましたが、自分の感覚としては、天候が1日安定している事さえ確認出来れば、通常の注意をして登山する限りなんら危険はないと感じました。
この天気予報に関しては、中津川市の防災気象情報のポイント予報で1時間毎の気象予報があり、すぐ近くなのでかなり正確だと思います。(実際、家を出る直前に見たこの日の予報通りだった。)
駐車場
林道を1km程走ると通行止めがされていて、その左手に10台程度駐車可能な駐車場があります。(もっと奥まできちんと駐車すれば20台以上可能かもしれません。)

駐車場を9:33に出発。登山口のすぐ先でS字上に登山道は曲がって標高をかせぎます。

   登山口のほうから駐車場を撮影(下山時)
右手手前は千葉から来たという中年女性2人連れのハリアー(最低地上高が充分あって何処でも走れるという雰囲気!)、もう1台は1時半から登り始めたという無謀な初老の5人組のデリカスターワゴン。
渓流
林道は基本的に本谷川の左岸にあります。本当に透き通った清流が流れていますが、右手の山からは絶えず落石の危険がありますので、注意してください。

砂防ダムの下が貯水池になっていて、エメラルドグリーンの水を湛えていた。この辺りを歩いていたら、1台車が上がってきた。バリケードをどかし、さらに途中にあった直径20cm位の落石も自分でどかして上がってきたものと思われる。

林道から見る本谷川の清流
雨が降れば暴れ川に急変?
トンネル
林道を20分余り歩くとトンネルがあり、トンネルを抜けるとあと少しで登山口に到着です。トンネルは中でカーブしていますが、短いのでランプは不要です。
右手の擁壁が壊れているのに注目。この林道の右手の山は非常に崩れ易いらしい。従ってバリケードを越えて上がってきて駐車した場合、崖崩れがあれば戻ることが出来なくなる恐れが高いので通行止めとなっていると思われます。

ここまで来れば登山口はすぐそこ
登山口
やや早めに歩いたので、登山口には9:53に到着。
狭い登山口にはピカピカに磨かれた石のベンチがあり、その奥には登山計画書のポストを兼ねた記念碑が建っている。
中には登山届けの用紙が入っているので、記入して登山しましょう。(1週間前に用紙を補充したとの書込みを見たので、自分は届出用紙は持って来なかったが、ない事もあるので基本的には書いて持ってきましょう。)
登山道は登山口の標識の左から河原に降り、橋を渡って対岸を登ります。増水したこの川を渡渉し流されて死んだ人がいるとの事で、増水時は渡渉しないようにとの注意書きがありました。

Webで恵那山に付いて調べていて分かったが、2002年の5月、登山シーズンの始まる前にと登山ポストを設置しに来た帰路、林道から車で転落して亡くなった阿智村役場の故熊谷課長さんの慰霊碑を兼ねたもので、中央にそのポストが埋め込まれている。
水場
登山口の右手(道路の反対側)には水場があります。水を汲んでいる頭の上の所に「湧き水」と書いた標識があります。
左に連なるコンクリートブロックで堰き止められた水が下流で流れ出しているような場所なので、本当の地下水なのかな?と思いました。しかも流出する側溝との落差も少ないので、水場は溜まり水のようにも見えますが、水量は豊富なのですぐに流出してきれいな水が汲めます。
娘が水汲みをしている間に登山届けを書き、出発したら、後から妻がカップに汲んで飲ませてくれました。甘いようなおいしい飲み味でした。

1,716m地点
川を渡った所から、登山道はジグザグに標高を稼ぎます。登っている時は険しいとは感じませんでしたが、斜面はかなりの傾斜です。
標高1,500m位からはほぼ雪の上を歩くようになりますが、ほぼ夏道の上を歩いているようでした。
やがて、1,716mという標識のある地点に到着しましたが、登山口ではそれ程誤差がないと思っていたプロトレックの高度計はまだ1,600m、その誤差を読み直して頂上までの標高差を計算しながら歩いていたが、頂上ではそれ程誤差がなかったので、本当に1,716mなのかちょっと疑問に感じました。


南アルプスの展望
登山道はほぼ森林の中を登っていきますが、尾根越しに展望が開けるところがあります。
南アルプスの山々の真っ白な山頂付近が次々と並んでいる姿が見られました。しかし、富士山は確認出来ませんでした。
このルートでは北アルプスなどの眺望もあるとの事でしたが、この頃は中津川市のスポット天気予報で確認していた通り、曇ってきて北の方向の展望はなかった。(下山した頃から、また晴れ上がってきました。)

上から1/3位の所に白い山が・・・
心眼!で見ましょう
県境分岐地点
ここは登ってきた尾根から恵那山の主脈へと移る地点であり、下山時にこの標識を見落とさないように注意が必要だと@恵那山に書いてありました。
@恵那山のページでは、ここの積雪を定期的に観測し、登山道の積雪量の指標にしているとの事だったので、@恵那山の画像掲示板に投稿しました。
投稿への返信では、例年より積雪は少なかったが今春の降雨も少ないために、思ったより雪解けが進んでいないとの感想でした。
雪庇
これもWebで検索したページに出ていた雪庇が発達する場所の雪庇の状況である。中央付近に亀裂が入っていて、そのうちに崩壊しそうな雰囲気であった。1ヶ月前ならかなり雪庇が発達していて、うっかり左端の付近を歩こうものなら・・・という危険な場所である。
足跡は手前では一部この雪の上を通っているが、真ん中に亀裂の見える手前から右側の林の中を登るようになっている。


恵那山の山頂
1,716m地点で腕時計(カシオ・プロトレック)の高度計が実際よりは100m以上低く表示していると思ったので、その分をプラスして読み替えていたら、そのうち2,100mを越えた計算になり、もう頂上は近いよと言ったが、案外登りが続く。森林の中を登って行くので頂上があとどれ位か分からなかった。
妻が休みたいと言うので、あと10分位だと思うよと言ったら(高度では頂上が近いと思っていたので)それならと言って歩き続けた。
実際に10分近く歩いて12:20やっと頂上に到着。娘に言わせると、ワンゲルの場合はもっと大きなザックを担いでいる事や足が揃っていないこともあって、もっと遅いとの事であった。
この時、向こうから60位の女性2人のパーティが来たので、3人で写真を撮ってもらった。我々より2時間近く先に出発していたらしく、若いから早いのねと言うので、娘は大学生で自分は51ですと説明した。

娘を真ん中にして写してもらおうとしたら、妻は真ん中は縁起が悪いと言って自分が真ん中になった。
避難小屋
この女性の話では避難小屋へ行こうと思ったが、案外下ってからの登り返しがきつく見えたので引き返してきて、ここで食事にするとの事だった。
言葉通り、進むと一旦下ってその向こうに森が小高く見えた。しかし、実際は標高で20mも下ったと思ったら避難小屋が見えた。手前にはこれも真新しいトイレがあった。4時に起きて車の中でお握りを3個食べただけだったので、お腹がすいていたので、早速小屋の中に入って食事にした。中はひんやりとしていて、妻は寒いと言って入口の陽だまりで日向ぼっこをしながら食事をした。

娘に食べさせるために持ってきた無農薬のブロッコリーを食べている所。右側には板張りの部屋があって10人以上が泊まれそうな広さであった。

恵那山で一番高い所は2,192mで、さらにこの先にあるはずだったので、小屋の横を少し登って進んだが、何処か分からなかったので戻ってきたら、途中ですれ違った中年4人組が小屋の前にいた。話をすると参考にした@恵那山の足立さんが小屋の前に座っている人だと分かった。前宮ルートから6時間かかって登ってきたという事だった。我々は9時55分に登山口を出発したと話したら、広河原ルートだからその時間でも登れるのだよね、と言っていた。
たくさんの薪が積んであるが、雪に埋もれている。屋根の雪が落ちるので入口も埋まるらしい。雪止めを付けなくてはと言っていた。山を知らない人の設計なのだろう。
トイレ
結局、着いてからほぼ1時間山頂付近にいた。帰る前にトイレに入ってみた。トイレは中もきれいでトイレットペーパーも置いてあった。

小屋に戻ってザックを担いで出発。頂上広場に出る所に祠があり、お賽銭を100円入れて拝んだ。


もう一度頂上の標識を撮影したが、丁度1時間後の13:20だった。
それからは雪面を快調に下った。時折がぶって股まで埋まることもあったが、登山靴に雪が入ろうがお構いなく下った。(例によってスパッツは持って行っただけで使わなかった)
女性2人のパーティ
頂上で写真を撮ってもらった女性2人組みのパーティに追いついて立ち止まって話をした。頂上でワンゲル部の娘だと紹介していたが、妻は(当然そう見られるだろうと紹介などしなかった所)30代に見られたらしく、娘と姉妹でないなら山友だろうと思っていたとの事で、妻はニコニコ。
この女性達は登山を始めて1年半位らしいが、もう百名山を40以上登っているとの事だった。車を利用して出かけているとの事で、まずはたっぷりお金がかかっていると思われる。(自分達は全て車中泊でホテル代等は一切かけていない清貧登山?です)1月には屋久島に行って宮之浦岳に登ってきたとの事で、2月末に行った娘(去年も3月に行っているので2回目)とルートや雪の量など盛り上がった。15〜20分位だろうか、話をして分かれた。

翌日、@恵那山のホームページで、この人たち(先に自分達のことが書いてあり、自分達も含めているようにも思えたが、1年前から百名山めぐりを始めた彼女らが・・・と書いてあるので、自分達は違うのだろうと解釈した。)を百名山ハイカーと決め付け、この時期来るべきではないと書いてあった。
当然、天候が急変した場合など危険があるが、この日の天気予報や積雪の状況などから、自分にはそのようには感じられなかった。もちろん恵那山を愛して遭難が起きないようにとの心遣いからだと思うが、他人を見下したちょっと尊大な態度に思えた。
ただ、彼女達は仕事をしながら週末などを使って1年余りでそれだけ登っているのであり、中には悪天候でも無理して登っているのではないかと考えられる。そういう事を繰り返していれば遭難に結びつく可能性は高く、頭を冷やすべきだと考える。「百名山病」という言葉があるが、死に至る病になってはシャレにならない。
無謀な登山者
14:30頃、標高1,600m位だったろうか、今頃?と思う時間に登山者が現れた。1時過ぎに登り始めたとの事。5人のパーティのようだが、先頭と最後尾では100m以上離れている。今からでは遅いのではないですか、と声を掛けたが、行ける所まで行くと言って登って行った。みんな装備もそれほどしっかりしているようには見えなかった。最後尾の女性はかなり汗をかいて息も荒かった。
別れた後、娘とこのパーティの話をしながら下った。きっとどこかで諦めて下山するにしても、途中で暗くなってしまうだろうけれど、ヘッドライトもみんなが持っているとは思えない。「そういう準備をするような人達なら、あの実力でこんな時間から登ることはないだろう」という結論だった。
遭難しなければいいが・・・、もっときつく言うべきだったかな・・・とか思いながら下った。翌朝のニュースで遭難を言っていないかと気になった程であった。

娘には、自分が1日に2つ百名山を登る場合でも、一つ目を暗い間に登り始めて、2つめは最低でも昼前には登り始めるよと言ったが、考えてみると自分も結構遅くから百名山に登っている場合がある。(韓国岳15:13、阿蘇高岳15:40、蓼科山15:49登山開始など)しかし、これらはいずれも往復2時間程度で戻れるという計算が出来る山であり、その間に天候の急変もないと予測出来た。しかも蓼科山は7月であった。

帰りは娘を近くの駅に送り、根尾の薄墨桜を見て帰ろうと思っていたが、やや遅くなった事と、妻が娘とのおしゃべりを楽しんでいたので、米原まで行く事にした。しばらく話がはずんだが、眠いと言ってフラットにしたシートに横になったら、そのまま米原まで寝ていた。ユミちゃんもいろいろ頑張っているんだなあ、と思った。
足立尚哉さんより
錆鉄人のホームページはずっと未公開で、つい最近ルクルプ登山隊のリングに登録させてもらいましたが、アクセスはほとんどないので、知っている人もほとんどないと思うのに、足立尚哉さんからメールを頂きました。
上記の少し批判的な内容に対する返答でした。以下にそのメールの全文をご紹介します。本人の了解は得ていませんが、自分の一方的な考えだけを載せておくのは足立さんに対しても不公平というか申し訳ないので紹介することにしました。(足立さんの恵那山に対する思い入れは尊敬という言葉以外に表現のしようがなく、、登山の参考になるホームページとしても、自分の知る限り「ようこそ、荒島岳OnLine」と双璧をなしていると思います。)

【足立尚哉さんからのメール】
錆鉄人様 こんにちは
@恵那山管理人の足立と申します。4月11日に小屋の前でお会いしたものです。
錆鉄人さんのレポートを拝見いたしました。私にとっては厳しいご指摘を頂いたと受け止めております。
山頂にいた二人の女性パーティに対する私の見解が、思い上がりに基づいている様に受け取められた点に付きましては、率直に反省したいと思います。
ただ、彼女らの服装と装備を見る限り、錆鉄人さんご一家のような慎重なパーティにはどうしても見えませんでした。また天気はご指摘通り予想できたのかも知れませんが、残雪の状況は結果オーライでしょう。伊吹山とセットに計画した彼女らには4月中旬という時期が問題だと言いたかったのです。
今後はもう少し書き方を工夫したいと思います。
貴重なご指摘をありがとうございました。
【錆鉄人の返信内容】
メールを頂き有難うございます。
私としては、あそこまで書かれたらあの女性達はかわいそうだと思ったので書きました。僅かの間にそれだけの山に登っていれば彼女達もそれ相応の体力を持ち、経験や危険への対処方法も積んでいるに違いないと思いました。
「どうってことないよ」というのが、典型的なミーハー百名山ハイカーである自分の正直な気持ちだったのも事実です。でも足立さんを攻撃するつもりではないことをご理解下さい。基本的にはリスクに対する考え方の違いだと思いますが・・・
私のページを読んだ人は、私の考えだけを受け止めると思いましたので足立さんの名誉の為、メールの内容をページの最後に追加させて頂きました。足立さんのお考えは伝わると思います。
あのようなことを書きましたが、
自分は足立さんの@恵那山のお陰であの時期の恵那山に登ることが出来ましたし、精力的な活動と素早いホームページへのアップなど足立さんの恵那山に対する思い入れ・愛情を尊敬いたしております。
今後とも、恵那山を目指す登山者の為にタイムリーな情報と厳しい指摘をお願いしたいと思います。足立さんの今後ますますのご活躍をお祈りいたします。
【足立さんからの返信】
さらに足立さんから返信を頂きましたが、これ以上足立さんのメールの内容を公開することは憚れますので、感謝の言葉を添えて返信があった事のみを記載いたします。
2、3誤解がありますので、私のほうからも追記させて頂きます。

>思い上がりに基づいている様に受け取められた・・・
あのように書かれた彼女達がどう思うか、思いやりに欠けるようにように感じたのと、私達夫婦は安物の(ショップのコピーでは「防水加工を施したヌバックレザーをアッパーに使用した」)ライト・トレッキングシューズで(娘は秋に買ったという冬用登山靴だった)スパッツもせずに終わったようないい加減な登山者だったので、足立さんの厳格な指摘にたじろいた所もありました。

>錆鉄人さんご一家のような慎重なパーティ・・・
登山路の状況や天候等の調査と登山者のレポートは出来るだけ調べて登山していますが、上で述べたようにスパッツもしない自分達は決して慎重なパーティではないと思っています。
ただ自分自身では、日本の登山者は過剰装備だと思っているので、その山と自分達の実力、気象条件等を考慮して必要と思うものを厳選し、軽量化して高速登山をしています。
あえて言わせてもらうとすれば、最も必要な装備は「体力・筋力・精神力」だと主張したい。冬山以外で遭難している場合の大半は装備ではなく「体力・筋力・精神力」の不足ではないかと思います。

錆鉄人の登山五輪の書でも書きましたが・・・

体と心
最終的に重要な装備は、遭遇する緊急事態にも音を上げない体と心かもしれません。
体力的にも余裕を持った山登りは楽しさを何倍にもしてくれますが、遭難寸前、ヘトヘトになっての山登りでは楽しくないですね。
日頃から体力と健康の維持に留意しましょう。



7月中旬
偶然にこの件に関する足立さんのコラムがある事を発見しましたので、ご紹介します。趣旨はあまり変わりませんが、足立さんの徹底ぶりは@恵那山の内容と同じですね。

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