もうすぐ世界遺産 羅臼岳

05.06.25

羅臼岳(1,660m)

遂に知床半島が世界遺産に登録されます。
羅臼岳もそれに含まれますが、
選定理由の一つが世界でも有数の
ヒグマ棲息密度だそうです。
つまり、それだ手付かずの自然をそのまま残しているという事ですが、
錆鉄人はヒグマが怖いので
ストックではなくピッケルを持って登山する事にしていましたが、
羅臼岳は避けていたのでした。
(クマに喰われるなら天女と一緒にと思っていたのでした。)

ところが斜里岳を登るのが困難な事が分かった錆鉄人は
何を血迷ったか羅臼岳を目指していたのでした。
斜里岳に登らないとすると近くには羅臼岳しかありません。
羅臼岳に登らないとすれば、
1日を無駄にして倶知安まで走るしかありません。
「無駄」が大嫌いな錆鉄人は
クマに喰われてでも
この日を有効に登山したいと思ったのでした。

羅臼岳では
天女の加護があったのでしょうか
ヒグマに出会う事はありませんでした。

「遥かクナシリ」を見る事は出来ませんでしたが
咲き誇る高山植物に大満足の羅臼岳でした。


どうやって行くの?
雌阿寒温泉から斜里岳登山口の清岳荘までは約110kmです。北海道の道路はあくまでも快調で、20時ごろには登山口のある清里町に入りました。「斜里岳登山口」の標識もあり、登山口が分からない不安もなくなり、先に町の中心部に向かって食料の買出しに行きました。
ところが、役場のある辺りにも、コンビニが見当たりません。愕然としながら車を走らせると小さな中心街はあっという間に過ぎてしまいました。しかし、幸運にもその先にコンビニを発見。夕食と朝食と昼食とビールを買いこれで準備万端、登山口の標識のあった所へ戻って、清岳荘を目指しました。
途中から北海道の登山口までとしては初めてのダートになりました。しかも、延々と10km近くはあったと思われます。
従って清岳荘には21時近くになって到着しました。駐車場から清岳荘の玄関までは何個かのランプが点いていて、清岳荘も赤々と電気が点っています。駐車場の外れで発電機が低くうなりを上げていましたが、相当もったいない運用をしています。
広い駐車場には車は数台ありましたが、1台の車から60代後半と思われる夫婦が出てきて話しをしてくれました。(彼らの車はフィットアリアで、やはり後のシートを畳んで寝るとの事で、助手席と運転席は荷物で一杯でした。)
羅臼岳に登ってここに来たと言っていました。夕方着いて小屋の管理人さんに聞いた話では、登山道は残雪が多いので融雪水が多く、膝までの渡渉を繰り返さなくてはいけないとの事でした。トイレは清岳荘の中にあり、3時には鍵を開けてくれるとの事でした。
膝までの渡渉か、嫌だなあ・・・と思いながら、コンビニ弁当を食べビールを飲んで、強制的に眠りに就きました。


清岳荘の夜明け
例によって熟睡は出来ないので、3時前には起きてしまい、3時になったのでトイレに行こうと清岳荘まで行きましたが、鍵が掛かっています。フィットアリアの夫婦も怒っていました。
3:45頃再度清岳荘に行った時はまだ鍵が掛かっていましたが、ちょうどその時管理人がドアを開けてくれました。ヒゲ面のいかにも山男という雰囲気の人でした。中は普通のホテル並でした。
トイレを済ませてさっぱりした錆鉄人が駐車場に戻ると、朝来た登山者と例の夫婦が話をしていました。「昨日登った人が往復9時間(通常4〜5時間)もかかってしまい、こんなの初めてだったと言っていた。」と、昨日は聞かなかった話を聞き、錆鉄人は斜里岳をきっぱりと諦めたのでした。(ぐしょ濡れの靴で羊蹄山を登るのはやはり嫌でした。)翌日(26日)は山開きだというのに・・・
例の夫婦に「自分は羅臼岳に登ろうと思う。」と言って羅臼岳の様子を聞きました。彼らは渡渉が済むまではズックを履いて行ける所まで行ってみると言っていました。

なかなか綺麗な朝焼けでした
(3:25頃)
斜里岳
という事で、4時過ぎには清岳荘を飛び出しました。でもダートなので20〜30km/Hで慎重に下り、舗装路に出てからは一気にスピードをアップしました。


清里町を出てしばらくした所から撮影
確かに名山の風格があります

知床半島へ
相当なスピードで走っていましたが、知床半島付け根辺りで、ライトを点けながらものすごいスピードで迫ってくる車があったので、パトカーかもしれないとスピードを落としましたが、普通の車だったので後を着いていきました。
真っ直ぐ
信号無し
早朝4時過ぎ
人っ子一人いません
錆鉄人は
制限速度を守るほど人間が出来ていません
ホテル地の果
知床自然センターの三叉路を知床五湖のほうに下り、しばらく行って岩尾別の標識に従って川沿いの1.5車線の舗装道を上っていくとホテル地の果に到着しました。清岳荘から岩尾別温泉までは約70kmあるのですが、なんと○○分で着いてしまいました。
すでに登山者のグループがいくつも準備をしていました。マイクロバスもいました。錆鉄人はここでやっと昨日買った朝食のソバを食べながら、出発する人を見送っていました。
それからアクエリアスと伊右衛門を500mLのペットボトル3本に詰め替え、食料のパンとおにぎり、500mLのカクテルパートナーをザックに入れて、最後に靴擦れしているカカトにワセリンを分厚く塗ってから靴下をはき、靴を履いて準備が整いました。

登山口はホテル右側の奥です
登山開始
準備をしている間にも車が来ては登山者を吐き出していましたが、5:30頃になったらホテルの関係者が出てきて、「ここは国からお金を出して借りている土地だから駐車しないでくれ」と告げていました。錆鉄人はお行儀良く駐車場の反対側の川沿いの空き地に駐車していたのでお咎め無しです。
クマが現われたら一戦交えるぞとの覚悟でピッケルを握り締めて、5:45出発しました。
ホテルの横を100m程進むと木ノ下小屋です。


手前は綺麗なトイレ
北海道は概してトイレが綺麗です。
でも山中にトイレはありません。
北海道では珍しく登山口の先に祠がありました。北海道では修験道とか山伏の歴史がなかったからだと思います。
天女の影響を受けた錆鉄人は、100円を入れていつも通り長々とお願い事をしました。

登山口には「クマ注意!」とデカデカと看板が出ていて緊張しながら進みます。特に曲がり角は聞き耳を立てるように進みました。

オホーツク展望台
オホーツク展望台とありますが、周囲は木に覆われているのに展望台とは?錆鉄人得意の心眼!でしょうか。
頂上まで5.9kmとあります。
650m岩峰
ここまでの登山道周辺には蟻の巣が多く、ヒグマがそれを食べに来るのでヒグマに注意するように書いてあったのですが、ここの看板では、「この先もヒグマはどこにでもいます。十分注意しながら歩行して下さい。「ゴミ投げ捨て厳禁」ゴミが危険なヒグマにしてしまうことをお忘れなく。」と書かれていました。
何のことはありません、やはり知床では何処にでもヒグマがいるという事でしょう。
ピッケルを握る手に力を込め、曲がり角の前では背中に手をやって鈴を振って無理矢理音を出して進みました。

弥三吉水

6:37弥三吉水に到着。ザックを置いて着いたときには男性が1人いたのですが、何処かに消えて行きました。トイレをしに行ったのだろうと思いす。

上のは雪渓が残っています
そこにあったカップで水を飲みました
大雪渓(大沢)
弥三吉水からは何回も雪渓のトラバースを繰り返します。同じ谷をトラバースしているので、数縦メートル下に追い越したパーティが見える時もあり、帰りは直下降しようかと思いましたが、帰りに来て見ると傾斜がきつく、さらに雑木も邪魔をしているので、普通に下りました。

やがて、大雪渓に出ました。20人程のパーティが入口でアイゼンを装着していました。例によって錆鉄人はアイゼンは「持っているだけ」で進みます。

雪渓は羅臼平下まで続いていました
大雪渓その2
雪渓の途中まで来てアイゼンを着けているパーティもいました。それにしても、皆さん歩くスピードが遅い。皆さん雪のない所から来た人かも知れません。
傾斜がきつくなってきた辺りから、雪が閉まっていて先行者の足跡もほとんど凹んでいません。しかし、錆鉄人はこういう斜面でもほとんどキックステップをしないで登る事が出来るので、スイスイ登っていきました。
【雪渓の登り方アドバイス】
登山靴のトラクションは相当高いので、ザラメ状に凍った雪面でも普通に登山者の通るコースなら、その場で滑らずに停まっている事が出来るはずです。滑るのは、歩く時に雪面で靴底を自分で滑らせて雪を溶かして滑りやすくしているからです。従って、靴底を回転させずに雪面に固定したまま登れば、滅多な事ではスリップなどしないのです。【錆鉄人の雪渓登りの極意)】(ただし、スリップしたら悲惨かも?技術と注意力と滑った場合の対応力が必要です。)

雪渓を登りきった所から撮影
上部はかなりの斜度でした
羅臼平
登山道の脇にはちらほら高山植物が咲いています。やがて峠というか、平な高原状の所に到着。(羅臼平です。)
両側に山が聳えていました。60代の女性が休憩していたので、「どちらが羅臼岳ですか?」とバカな事を聞きましたが、地図を見ていないので知らなかったのでした。「あっちの方だと思うわ、ダンナがあそこで待っているから」と指指した方を見ると、ハイマツの間に男性が見えました。千葉の人だと言っていました。
先に進んで行くと、ダンナは大きなおにぎりを食べていました。「奥さんと一緒に歩いたほうがいいですよ。自分は一緒の場合はいつも嫁さんを先に歩かせています。」と言ったが、帰りに逢った時もダンナのほうがずいぶんと先にいました。折角2人で来ているのにと思いました。

カッコ良く聳えています
上部は岩の砦のようです
岩清水
10分程ハイマツを進むと、やがて登りになります。少し登った所に岩清水があります。

風で揺れる水滴を備え付けのジョウゴで集めて飲みました。眺めも良くておいしさが倍増です。

(下山時撮影)
岩から垂れる水滴を
ジョウゴでペットボトルに集めています
頂上近くの雪渓
岩清水からは登山道の両側に高山植物が咲き誇っています。花の時期にはまだ早いと思っていた錆鉄人でしたが、冬の訪れが早い分、雪が溶けるとすぐに花を咲かせるのでしょう。これまでは、ほとんど高山植物を見なかった事もあって、錆鉄人は大喜びで写真を撮りまくりました。
ほぼ全ての人を追い越してきたと思っていましたが、雪渓の上に登山者を発見。でも、花の撮影を優先しました。(花の写真は巻末です)

短い雪渓をほぼ直登します。
頂上
8:20頂上に到着したら、頂上には2人の登山者がいましたが、パーティではありません。写真を撮ってもらった後、その人も撮ってあげました。
残念ながら北東方向は雲に覆われ、クナシリもエトロフも見えませんが、北のほうには雲の上に2つの山が浮かんでいました。歯舞島と色丹島だと思いました。
この2人の前にも登山者がいたらしく、「あの人は2時間半位で登ってきたのかもしれない。」と言っていましたが、考えてみると錆鉄人も2時間半を切っていました。(コースタイム)

花・花・花とこの眺め
大満足の錆鉄人でした
頂上からの眺め
知床半島の付け根方向

知床半島の先端方向
登山者
錆鉄人は羅臼岳の頂上でカクテルパートナーを飲みながら超満足でした。2人とも地元の人で色々な話を聞きました。
高山植物が綺麗ですねと言うと、花は来週か再来週が最高だろうとの事でした。{下りたらうに丼を食べようと思っているのですが、お勧めは何ですか?」と聞いたら、「ここでは3,000円取られるよ、札幌なら1,200円なのに!」と楽しみにしていた錆鉄人は冷や水を浴びせられてしまい「いくら地元でも1,200円のものが3,000円じゃあ・・・」と素早くうに丼をメモリーから消去するのでありました。

中央に島影!(心眼)
下山
やがて、たくさんの登山者が羅臼平から近づいてくるのが見えました。「あんなのと岩場で待たされたら大変だ」と考えた錆鉄人は下山することにしました。もう1人も下りることになりました。
8:45下山を開始。途中で例のおかしな夫婦もに逢いましたが、やはりダンナは相当先行していて、奥さんは置いてけぼり。普通ならもう一緒に山に行くとは言わないと思いますが、忍耐強い奥さんです。
岩清水でペットボトルに水を汲み羅臼平へ。次々に登山者が来ます。そこにはまたかなりのパーティがいて頂上まではどのくらいかとか聞いてきます。「高山植物がたくさん咲いていて、岩清水も冷たくておいしかったですよ。あそこに見えるのが岩清水です」と言うと、にわかに元気付いて出発の用意を始めました。
羅臼岳と別れがたく10分程羅臼平にいました。

20人程の登山者の列
銀冷水
雪渓上部の雪もかなり柔らかくなってきていました。下りる場合はかなりの急角度ですが、錆鉄人はこういう所の下山は得意中の得意です。大股でバーン、バーン、バーンと飛ぶように下りて行く(富士山の砂走りを飛び降りる感覚です)と、登っている登山者はみんなビックリして見ています。
という事で長い雪渓もあっという間に通過し、そのままの勢いで下って行くと、何故か若干道を間違え(というか、夏道が出ていたのでそのまま入っていったので)登るときにはなかった銀冷水に出ました。
少し下ると登りの時の登山道に合流したので安心しました。(実際は登りのルートがずれていたのでしたが)


羅臼岳の花(1)

雪渓から羅臼平の間にて

エゾノツガザクラ
羅臼岳の花(2)

チングルマ(と思います)
(2)から(5)は羅臼平〜頂上で撮影


羅臼岳の花(3)



羅臼岳の花(4)


案外いい写真はないものです
要するに腕が悪いのですが・・・
羅臼岳の花(5)

エゾコザクラ


羅臼岳の花(6)

かなり下のほうで撮影


下山
弥三吉水で最後の登山者(ちょっと遅い気がします)に逢い、水を汲んでいる所を撮影してもらいましたが、あとは無人の登山道です。下りは揺れが大きいのか、鈴の鳴りが良いのが救いです。やはり、曲がり角では用心しながら下りました。
途中で空腹感を感じましたが、考えてみたら頂上でカクテルパーティ以外口にしていなかったのでした。
けれども1人で食べている所を匂いにつられてヒグマが現われると怖いので、そのまま何も食べずに10:25登山口に到着。車にザックを下ろしてから食べました。
それから、無料の露天風呂に入りました。
登山:2時間20分
下山:1時間25分
(休憩を除いた実登山時間)

長くなったので知床・層雲峡観光編
別途アップします。

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