超絶おバカ山行 新穂高から鷲羽岳・水晶岳日帰り

06.07.22
(HPの容量がオーバーしたので、無料HPを利用しているので末尾に広告が付きます)
鷲羽岳・水晶岳日帰り

それは錆鉄人にとって「出来るか出来ないかの賭け」ではなく、
単に
「やり遂げるもの」であった。

そのための厳しいトレーニングなどは
一切しなかった
出来るという確信を持てるよう
メンタルトレーニングに励んだ。
ロングトレイルの制覇に必要なものは
体力ではなく精神力であるからである。
(単に「出来る」と思い込んだだけであったが・・・)

体力不安を打ち消す為に
装備の軽量化に打ち込み、
ザックの
余分なベルト切断で50g
2ヶセットの
熊避け鈴を切り離し
さらに50gの軽量化を達成し、満足感に浸った。

徹底した軽量化を図るために装備の重量計測も行った。
同じ登山用の長袖シャツでも20gの差があった。
靴下も今まで25−27cmのものを履いていたが
24−26cmのものを買ってきた。
重量を測定してみると差がなかった(値段も差が無かった)が、
今までの物は履き古して薄くなった為に軽くなっただけと判断した。
(錆鉄人の超高速歩行では、すぐに踵に穴が開いてしまうのであった)

という事で
コースタイムの半分で実行する青写真を作り、
温泉に入って家に帰る計画を立てていたのであったが・・・




鷲羽岳から
鷲羽岳に登ってしまえば、あとはそれほど標高差のある登りはないので、半分は過ぎた気分でした。水晶岳までは数年前に天女と一緒に往復していて、その時は幕営装備を担いでいても軽々と歩けた楽なコースだったと楽観視していました。
しかしながら、体調不良の為でしょうか、食料をほとんど食べなかったためでしょうか、ここまでの行程の長さ・標高差がかなり利いてきていたとは思うのですが、頭では「雲の上を飛ぶように歩く」事を想像していたのに対し、「水の中でもがくような感じ」で足が上がりません。
ワリモ岳への登りでフーフー、登山道の数メートル上が本当の頂上ですが登る気力が湧きません。「単なる通過地点だから」と言い訳しながら通り過ぎました。
それからは下るだけですが、やはり飛ぶようには行かず、「こんなんで12時までに水晶の頂上に立てるのだろうか?」と不安になってきました。(出発時は最悪で出発から8時間の12時到着の19時戻りだと思っていましたが、この辺りでは暗くなってから戻ってもいいやと、帰着時間をズルズル後退させていた
無節操な錆鉄人でありました。)

ワリモ岳分岐
そして、ワリモ岳分岐に到着。
帰りはここから岩苔分岐まで下り、黒部川源流の碑を見て(錆鉄人はミーハーなのです)三俣山荘に戻る予定です。(もう一度、ワリモ岳・鷲羽岳経由で戻るよりは楽が出来て早いだろうという計算でした。)ルートのほうを見ましたが、問題はなさそうに思いました。
ここからはゆるやかに下り、ほとんど平原状の所を進んだ後、水晶小屋への登りが少しあるだけなのでした。「少しあるだけだ」と思い込みたかったのですが、「あの登りが嫌だなァ」と見渡していました。


ワリモ岳分岐からの水晶岳
お花畑
少し行った所で、単独行の若い女性を追い越しました。黒ずくめの厚着をして、ゆるゆると歩いていました。錆鉄人は短パンにWストック(鷲羽岳から風が強くなったので、頂上で長袖シャツを着ていました。)という勇ましい格好なので、颯爽と追い越していきたかったのですが・・・。
追い越した付近は一面お花畑だったので、滅多に会わない登山者の記録にと写真を撮りました。(鏡平山荘から少しの所で登山者を追い越した後、登山道で会った初めての登山者でした!)
少し過ぎてから振り返ると、ずいぶんと離れた所を歩いていました。誰でも登山口から余りにも遠いこの辺りでは歩くのが嫌になるものでしょう。
それでも水晶小屋への登りは、それほどブザマではなく登ったように思います。

水晶小屋
ということで、若い女性に後ろから見られている事を意識して頑張った?錆鉄人は、ついに水晶小屋への登りを制覇!
すると登りきった所に、そこから小山を登る踏み跡に「水晶岳」との表示があります。以前はなかったのに?といぶかる錆鉄人でしたが、小屋の前に回り込めば、そんな無駄な登りをしなくて良い登山道がある事を知っているので、小屋へと下りました。

回り込んでみると、なんという事でしょうか。
そのルートは通行止めになっているのでありました。泣く泣く引き返す前に、せめて少しでも体を軽くしようとトイレに入る理性的な錆鉄人でありました。今回は手洗い用の水もちゃんとあって利用出来ました。
こういう徒労をした時は、実際以上に疲れた感じがするものですが、自然保護の為だろう、しかたがないと思いながら進みました。(写真のように一部雪渓に掛かっている所があったので、単に通行止めにしていただけかもしれません)


踏み跡は残っているのですが・・・
赤牛岳
10mほど無駄に標高の高い所に登らされて、悔しいので裏山の上から1枚。でも小屋の横からのルートは、一旦少し下って尾根に上がるので、実際は同じ位の標高の無駄だったのかもしれません。
赤牛岳は名前通り赤っぽく見えました。北アルプス最奥の山との事ですが、ここへ登る人はよほどの変わり者ではないでしょういか。錆鉄人は変わり者ではないので、勿論登ろうとは思いません。

岩場
のんびりとした平原を過ぎると、岩場の通過になります。前回、天女が「こんな怖い所があるって言わなかった。」と文句を言いましたが、聞かなかったから言わなかっただけです。(それほど怖い所などありません。単に岩の乗り越えがあって、横は数百メートの断崖があるというだけで落ちる危険はありません。)
写真を撮った後、上から夫婦連れが下りてくるのと出くわしました。小屋のベンチに2つ置いてあった結構大きなザックの持ち主だと分かります。
ダンナのほうは「登りが優先だったっけ?」と奥さんに言いながら不満そうでしたが、こちらはハシゴの途中だったこともあって上で待っていてくれました。「当たり前でしょう!」とは言わず「済みません」と言って通り過ぎる心の広い錆鉄人でした。

水晶岳頂上

という事で、11時39分、
遂に!やっと!とうとう!水晶岳に到着。バンザーイ!


すぐに自分撮りで証拠写真?の撮影
なんか疲れた顔なので小さくしました。
泣きそうな顔にも見えますが
泣いていません!
(まだヒーヒーだったのかな?)

水晶岳の頂上の展望は素晴らしく
至福のひとときを味わいました。
頂上から

黒部五郎岳、祖父岳


赤牛岳の向こうに立山が!(心眼)
水晶小屋に戻る
遥かかなたの笠ヶ岳の姿に現実に戻された錆鉄人は、遥かな戻りのルートを引き返すために、11時51分頂上を出発しました。
水晶岳に12時までに着かなければ(出発して約8時間という事なので)暗くなるまで(一応林道になるので午後7時までは明るいだろうと考えていました。)に戻るのは難しいと考えていたので、11時39分に着いたという事で、かなり楽観的になっていました。
水晶小屋に戻って(12時10分頃だろうと思います)「ここまで来れば2/3が終わったようなものだ」と考え、前祝にビールを飲みたいなと思いました。
しかしながら、水晶小屋は小さい上に水もないので、ビールやジュースは下の写真のビールの後ろの水槽に入れてあるだけです。つまり、冷たくないのです。(前回はそれで買わなかったのでした!)気温が12.5℃なのでビールもそれ位の温度という事です。



ベンチの後の窓の所に置いてあった温度計
ビール!

「そんな生暖かいビールなど飲めたものではない。」と理性的に思いながらも、錆鉄人は「怖い物見たさ」で蓋を取ってビールに触ってみました。
すると水温12.5℃は結構冷たく感じました。というか、冷たいと思えと命令が走ったのかもしれません。手からビールが離れなくなったので、「しかたなし」にビールを購入何と!冷たくないビールが600円もするのでした。
つまみ一袋も食べて、元気が回復した気分でした。


    小屋の前から
向こうに行けば高瀬ダムに下ります。
小屋に戻ってすぐに2人の登山者が到着して、宿泊を申し込んでいました。来る途中で追い越した女の子は、バイトの女の子と友達らしく、狭い台所の中で盛り上がっていて、錆鉄人の「ビール下さい」の声も聞こえないようでした。(バイトに来たのかもしれません)
ビールの缶を捨てようと中に入った時(普通は持って下山するのですが、今回は1gでも四分なものは持ちたくなかったので)、横の狭い部屋(6畳間位に感じましたが・・・)で2人がカレーライスを食べていました。
ワリモ岳分岐

12時20分水晶小屋を出発。下りだけなのでスイスイ進み、ワリモ岳北分岐に12:37 到着。


予定通り岩苔分岐に下りました。12:42到着。前回もこの辺りの斜面に雪渓があったように思います。「源流方面は雪渓崩落に注意」という内容の表示があったのですが・・・
黒部源流の碑へ下る

一応、足跡も2つ程あったので大丈夫だと下りました。
しかし、源流の碑に到着する前から、というか、下りだしたらすぐに水が流れています。これこそ源流のはずですが・・・



まだまだ下らないといけないようです。
正面の三俣蓮華岳の雪渓の下まで登る必要があるので
出来るだけ高度を失いたくないのですが・・・
容赦なく下っていきます。
恐怖の雪渓横断
登山道には水が流れていてぬかるみもあるので、下るスピードも上がりません。やがて、雪渓が現れ、しかもその上を渡らなければなりません。そうして3回程、恐々雪渓を横断しました。
最後の雪渓は右の写真ですが、水音はゴウゴウと轟いていて、もし崩落したら上がれない(というより、死ぬ)と思って、慎重にルートを選んで渡りました。我ながら的確なルートファインディングにほっと一安心。(天女の加護だと思います。)
楽しみにしていた黒部川源流の碑も見当たりません。くたびれもうけの銭失いならぬ、くたびれもうけの命失いになる寸前だったのですが・・・
恐らく来週は通行禁止になるのではないかと思いました。

【備考】
雪渓の厚みから渡っても崩壊の危険性はないと思いましたが、中央部が薄くなっている場合もあります。この時点では10メートル以上の厚みがあるようで、危険なのは両端の薄い部分だけだろうと考えましたが、やはり中央部はおっかなびっくり、ストックを出来るだけ前方に力一杯突き刺して確認しながら這うように渡りました。


最後は幅30mはあった・・・フーゥ!
分岐

という事で、嫌になるほど下って来ましたが、ここから一転して登りです。


右へ行くと雲の平方面
まさしく「谷間」です
三俣の天場

三俣山荘への登りは標高で200m位でしょうか。しかし、この登りがすごくきつく、ヘトヘトでした。今まで感じた事がない心臓があおつ感じがしたのは、ビールの影響が登りで出たのでしょうか。
13:37 三俣の天場に到着。少し戻ると山荘ですが、水はここで供給できるので、戻るだけ無駄だと冷静に判断する錆鉄人
水晶岳から三俣山荘に戻る場合は、鷲羽岳経由のほうが絶対に楽だと思います!逆に水晶岳に行く場合も同様です。

石に腰を下ろしてパン(ハムカツサンド)を食べました。
ここまで食事といえるものはおにぎり1個だけでしたが
それほど空腹感は感じていませんでした。
疲れすぎていたのかもしれませんが、
パンもなかなか喉を通らず水で流し込みました。
13:45 三俣峠に向け出発
休憩
三俣の天場から、またまた長い登りが続きます。来るときはハイマツ帯の中を通った(下のほうだけだったかもしれません)と思いましたが、登りは明るい感じの沢を登りました。余り水が流れていなくて歩き易いと思ったら、途中に石を並べて溝が作ってあり、水が横に流されていました。下る時に逢った青年達が作業したものだと思いました。という事は、ルートも同じだったのでしょうか。すでに、頭が死んでいたのかもしれません。
でも、パンを食べた効果か、アルコールが抜けたからか、この登りはそれほどきつくありませんでした。
登りきった所に十数人のグループが休憩していました。朝、鏡池山荘から少しの所で追い越した人達で、宮崎から来られたとの事でしたした。
「水晶まで行ってきたのですか?」と聞かれたので「はい、百名山で一番長いコースなので、今53歳の自分が来年日帰り出来るかわからないので。」と答えたら、拍手して下さいました。何でそんなきつい山登りをするのと聞かれたので、「時間も金もないので」と答えると、「俺たちは体力はないけど、時間も金もあるって事だな。」とやや自嘲気味に言われました。宮崎の山にも登ったことがありますかと聞かれたので、数年前に3日と6時間で九州の百名山5つと温泉に4つ入って観光もして帰ってきた事を話しました。


別れた後、気がついて
「写真を取らせてください」と言ったら
手を振ってくれました。(14:17)
三俣峠
休憩していた所からほんの少し(1分もかからない)進んだ所が三俣峠です。
結構アップダウンのあった巻き道コースを戻りのはいやだなと思いましたが、目の前の登りはもっときつそうでした。一度通って所は安心感もあるので、しかたなしに巻き道コースを戻りました。途中で何組かの登山者とすれ違いましたが、今日の三俣山荘は混雑する所までいかないで快適だろうと思いました。

巻き道分岐に到達
15:00 巻き道の取り付きに到着。ここを下れば双六小屋です。双六小屋までは、ほぼ一直線の急な下りで、快調に高度を下げて下りました。
写真のように空模様が怪しくなってきたので、雨が降っても雷だけはゴメンだと思っていました。

双六小屋
15:08 遂に双六小屋に到着。「もう後は下るだけだから、終わったようなものだ!」と思った錆鉄人は、これまでほとんどエネルギーの補給をしていなかったことに気がつきました。しかしながら、おにぎり(前日買ったので午前10時が賞味期限でしたが・・・)もパンもあまり食べたいと思いません。
ここは液体で補給するしかないな。」と冷静に判断した錆鉄人はビールを買いました。ここではちゃんと冷蔵庫に入っていて冷たいビールが500円!です。つまみを食べながら飲みましたが、エネルギーが体の隅々まで瞬時に行き渡った感じがしました。
生ビールも800円で売っていて、ちょうどこの時到着した4人グループが買って、外のテーブルで賑やかに飲み始めました。
ちょっと後悔する錆鉄人でした。
最後の水補給をして、15:21 双六小屋を出発。(このコースは水の心配がない所が◎ですね!)



残雪の影響か
宿泊客は少ない模様
双六小屋と天場

小屋から2分ほどの所から降り返った所
天場には3つのテントがあるばかりです。1つは張りかけていましたが、風が強くて苦労していました。


行く手を見る
何処まで行かなければならなかったっけ?
下るばかりだと思っていたのですが、
まだまだ登りが待っていてくれました。
分岐
ここまで来るまで、アップダウンに悩まされました。というか、ダウンは余り無かったような気がします。アップといっても、双六小屋からの直後の登りをこなした後は、大きな登りはなかったのですが・・・。
ビールを飲んで、体の隅々まで瞬時に行き渡ったのはエネルギーではなく、疲れだったのではないかと思いました。「登りがある間はビールは飲むな」(錆鉄人の超絶おバカ登山の法則 その4)
そう思うほど、嫌々登ってました。この途中でもいくつかのパ-ティに逢いました。

ということで、遂に、やっと、とうとう、鏡平山荘への分岐に到着。これで、本当に後は下るだけです。
錆鉄人は勇気100倍で下りました。

鏡平山荘
それにしても、錆鉄人の下り足は衰えを知りません。何度も言いますが、誰か「富士下山競走」を企画してください!

快調に下って 16:24 鏡平小屋に到着。
PROTREKの標高は2,300m辺りを指していました。確か新穂高のバスターミナルは1,090mです。まだ1,200mの下り、途中一気に高度を下げる場所はなかったし、さらに長い林道歩きがあります。暗くなる前に戻れるかどうかは微妙な気がしました。
手前の談話室でしょうか、食堂でしょうか、賑やかな笑い声が聞こえてきます。新穂高からの「今日のきつい登り」をこなした満足感に浸ってビールを飲んでいるのでしょうか。
錆鉄人はまだまだ満足感に浸っているわけにはいきません。「羨望感」を感じながら通り過ぎました。(何でこんな苦しい事をやっているんだろう・・・)
小屋の前のベンチには何故か男性が一人。
残念ながら帰りも、鏡池から槍ヶ岳の展望はありませんでした。

秩父小沢
途中、2分当たり25m〜30m下る(PROTREKは2分ごとに高度を表示する)快調な所もありましたが、大抵はゆるやかな下りです。
秩父小沢に到着。水量も減っている感じがしました。ここで顔を洗って、ついでに手にすくって水を飲みました。

大チョンボ!
雪渓を何度か越えて秩父沢に到着。この直前の雪渓でルート通りの足跡が少ないなと思いましたが、どうやら秩父沢を高巻きして、そのままうまく横に歩いてコースに復帰したのではないかと思います。
しかし、そういう芸当の出来ない錆鉄人は、通常のルート通りに戻ってきてしまい、秩父沢の渡渉ポイントに出たのでした。
朝とは全然水量が違います。朝はどの岩の上も水が覆っていましたが、今は頭を出しています。3つか4つだったか忘れましたが、その岩の上を跳び渡れば向こう岸です。ひとつひとつの岩の間隔は1m程度で、錆鉄人には訳なく感じました。(かつて錆鉄人は垂直飛び95cmを誇っていました。35年以上も前の事ですが・・・)
こういう所でも錆鉄人は慌てません。ピョン、ピョン、ピョンと飛んで最後の岩にしがみつくシーンをイメージトレーニングして、いざピョン、ピョン、ピョンと飛びました。
最後の岩にしがみつこうとしたら、何と両手にストックを持ったままである事に気が付きました。金無し錆鉄人はとっさにストックを捨てる決心が出来ず、ストックを握ったまま岩に手を付きました。(握ったままなので、右手の親指の爪の下と、左手の拳の皮が剥けて血が出ました。)
が、勿論しがみつけるはずはありません。
ズルズル滑り落ちそうになったので、そのまま滑り落ちれば岩で足を擦りむいて血だらけになりそうです。
エイッと跳躍しました。勿論、水の中へです。
体勢が崩れたまま飛んだのと、結構急流で上の岩の隙間から流れ落ちる水が案外近くに落ちていたこともあって、一瞬でしたが、もろに流れの中に顔を突っ込みました。背中を越えて水が流れたので、瞬間デジカメが大丈夫かと心配する冷静な錆鉄人でした。


深さはかなりありましたが、流れの端のほうだったので流されることもなく、「戻ったら温泉に入るつもりだったけど、少し早く冷泉に入ったと思えばいいや。」と考えながら、落ち着いて岸に上がりました。
すぐにデジカメを拭こうとザックを下ろして、デジカメのケースを手に取りましたが、何か変です。ここで、メガネをしていないことに気が付きました。水の中に顔を突っ込んだ時に、一瞬でメガネを持っていかれたのに違いありません。
ちょっと、というか、かなりショックでした
。錆鉄人は視力が0.1もありません。従ってメガネ無しでは足元もほとんど見えないのです。さらに、メガネ無しでは車の運転は絶対に無理です。確か、グローブボックスに予備のメガネを入れておいたはずですが、北海道出張の時に予備として持っていった後、戻した筈ですが・・・100%の自信がありません。
とりあえず、デジカメをケースから出してみると、まだ中まで水が浸み込んでいなかったので無事のようです。ザックの中のビニール袋を取り出し、デジカメを入れて一安心。

後は無事に車に戻ることです。
まともな視力がほとんどない状態で、石ころだらけの登山道を歩くのは危険です。暗くなったらさらに見えなくなります。しかしながら錆鉄人は、ぼんやりした視界の中ではありますが、動物的勘と申しましょうか、無謀登山を重ねた末の熟練の技と申しましょうか、腕にはめた天女の数珠のお陰でしょうか、的確に足を運んで、足を捻挫することもなく進んだのでありました。
林道に到達

という事で、冷泉浴をしてリフレッシュした錆鉄人は、17:36小池新道取り付きの林道に戻りました。
林道の雪渓は、こちら側にはポッカリと穴があって涼しい風が出ていました。(来た時からあったけど。入っても向こうには出られません。)錆鉄人は来た時と同じように上を乗り越えましたが、よく見ると巻き道のように踏み跡が出来ていました。
林道ですからもう安心、ほとんど目をつぶっていても歩けます。もう心配なのは車に予備のメガネがあるかどうかです。
なかったらどうしよう・・・。何処にあるだろうか。どうやって持ってきてもらおうか、それとも明日メガネを作って帰ろうか・・・。でも、近くにメガネ屋さんなんてあるはずがないし・・・。


やがて、わさび平小屋に到着しました。(17:49)
着衣のまま冷泉浴をした錆鉄人の短パンとTシャツはまだ乾いていません。右手親指と左手拳の傷は、直径1cmほど皮が剥けていて血が出ています。よく見ると、右足の膝の上が手のひら位の大きさで赤くなっています、軽く擦りむけた感じです。
カッコ悪いので、小屋の手前で写真を撮り、素早く通り過ぎることにしました。横のベンチには数人の人がいましたが、目をやらずに通過しました。(といっても、向こうからは見られただろうな〜)
笠新道の所で水を2口飲み、もう少しだと思って進みました。でも、駐車場までは案外遠かった印象です。
新穂高バスターミナル
こんな時間になると、人っ子一人通らない林道です。またまた熊の恐怖が・・・。しかし、錆鉄人には川に飛び降りようが(落っこちようが)この時の為に(単にケチで捨てられなかっただけですが・・・)離さなかったストックがあります。またまた、身構えながら下りました。
ホテル穂高を過ぎて橋を渡れば、前方に新穂高の温泉街です。もう、熊の心配はありません。

18:31 遂に!やっと!とうとう!帰ってきました。
懐かしいぜ、新穂高バスターミナル!

ロープウェーの駐車場はロープが張られていて、人っ子一人いませんが、軽のパトカーが心強く感じます。

車に戻る前にトイレに入って、バスターミナルを撮影。剥けた指の皮は邪魔なので千切りました。

駐車場
車道を歩いてロープウェーの駐車場を通り越し、来た時は一番下の駐車場の端から道路に出たように思っていましたが、そうではなく、何か分かりませんが車数台分ほどのコンクリート構造物の下手から駐車場への近道がありました。
もう、連絡通路には水も流れていません。

18:39 遂に!やっと!とうとう!帰ってきました。
懐かしいぜ、ステップワゴン!


車を通路のすぐ横に停めたので、少しも歩かなくてすみます。錆鉄人の頭脳的なプレーでした。
先ずは、車のドアを開けてグローブボックスを開けました。ドキドキする瞬間です。ありました!
さすが、錆鉄人は準備万端怠りないのでありました。(南アルプスの地図を持って来てしまいましたが・・・)
実に15時間ぶり(正確には14時間50分位)に登山靴を脱ぎました。錆鉄人はふくらはぎが異常に太く、靴下を上げておくと窮屈なので足首のところまで折り返しているのですが、新しい靴下は繊維が靴にくっついていてなかなか離れませんでした。
靴を脱いで靴下を脱いで裸足になりました。なんて気持ちがいいのでしょう。正に開放感でした。


さすがに車が増えていましたが
一番上の駐車場でこの状態(半分以下)
下数段には数台駐車しているだけでした。
帰途へ
車の中に入って、短パンとTシャツを着替えました。まだ濡れているのでタオルの上に置きました。
歩いている時は、しばらく寝てから帰ろうと思っていたのですが、駐車場に戻ったとたんに、すぐに帰るつもりになっていました。どうやら、愛妻家の錆鉄人は天女の元に一目散に戻る「習性」が出来てしまっているようです。
車の中に残しておいたお茶とコーヒーをガバッガバッと飲んですぐに出発。ポテトチップスやチョコレートを食べながら運転しました。
心配しているかなと思って電話するのですが、出てきません。逆に心配になってきましたが、きっと畑の草取りをしているに違いありません。
高山市街に近づいた頃、やっとつながり、現在地と帰宅予想時間を報告。いつも通り「気をつけて帰ってきてね」

錆鉄人は登山が終わった後は、カツ丼食べたい病(「登山後にはカツ丼を食べるべし!」 錆鉄人の超絶おバカ登山の法則 その5)になっているのですが、ドライブインは閉まっていました。ポテトチップスやチョコレートだけではさすがに腹が減りそうなので、コンビニに寄りました。すると、「カツ丼・焼きソバ弁当」があるではありませんか。500円を払って暖めてもらい、車に戻って食べました。
「マズイ!」焼きソバはそれなりですが、カツ丼は最低です。それでも、錆鉄人は勿体ない精神を発揮して、無理矢理詰め込みましたが、ご飯は半分位食べた所でギブアップ。今回は最後まで食べ物に泣かされた山行でした。
泣く泣くゴミ箱に捨てて、もう一度店内に入ってアイスクリームを買い車を走らせました。アイスクリームに外れはありません。
途中、いつも通るショートカットの道路が通行止めで10分ほどのロスになってしまいました。
帰ってから
22:40 遂に!やっと!とうとう!帰ってきました。
懐かしいぜ、我が家!
(って、昨日の朝、家を出た所ですが・・・)

天女が迎えに出てきています。
ありがとう、天女!
ドラマなら熱い抱擁をする場面ではありますが・・・。「10時に帰ると言ったので心配したわ!」と天女は言いますが、絶対に10時半頃と言った筈なのですが・・・

シャワーを浴びてビールを飲んで寝ようと思いましたが、頭がすごく熱くなっていました。熱中症かな・・・と考え、冷やしたいと思いましたが、我が家には水枕がありません。小さなアイスノンはすぐに暖かくなってしまいます。考えた末、プラティパスに水を入れて水枕にしました。登山用品は何て利用価値があるのでしょうか!

冷泉浴の被害は他にもありました。
翌日、時計をはめようとすると、ベルト取り付け部のプラスチェックカバーがなくなっていて、バネ軸が見えてます。岩にぶつけて割れたのではないかと思います。バネ軸が抜けて時計を落とさないように注意しながら、しばらくは我慢しているつもりです。

翌日(日曜日)はのんびり朝食を食べていると、(家の前の鳥居の所に)「草刈り機を持った人が集まってるよ」と天女が言います。来週だと思っていた地区の草刈の奉仕作業が今日だったのでした。(来週は林道の草刈作業でした。田舎はこのような強制的に出なければならない事が多すぎるので大変です。若い子が集落を出て行ってしまう原因だと思うのですが・・・)
という事で、数時間草刈作業をして、お昼を食べて昼寝をしたら、久しぶりに強烈な筋肉痛になっていました。

頭は日曜日も月曜日も熱く、寝ようとするとクラクラする感じなので、毎晩プラティパスのお世話になっていました。
メガネのほうは、月曜日仕事の帰りにメガネ屋さんに行って、無くしたのと同じ弱い度数のメガネを作って貰うことにして、火曜日の夜に受け取りました。
新しいメガネにするとすごく楽でした。この日以降、頭は熱くなくなりました。熱中症というよりは、メガネの影響だったような気がします。
総決算
全山行時間(新穂高バスターミナル出発から到着まで)
13時間56分
全行動時間
(食事・休憩時間等を除く)
12時間24分
(集計;嘔吐休憩5分、双六小屋12分、三俣山荘12分、鷲羽岳2分、水晶小屋3分、水晶岳12分、水晶小屋10分、三俣天場8分、三俣峠約10分、双六小屋13分、冷水浴5分 合計92分)
雪渓によるルート不明瞭や歩行困難(特に黒部源流への下り)による時間ロスを考えると、登山道が普通の状態ならば、この日の体調でも行動時間は12時間以内に治まったのではないかと思われます。もっとも、様々なアクシデントがあるのが登山であり、もしもう1回やったら(当分、行きたいとは思わないでしょう!多分死ぬまで!)12時間以内で出来るという保障はありませんが。

【費 用】
高速代1,800円(往きは通勤半額で600円)
ガソリン代4,700円(約34L×135円)
合計 6,500円!

【損失額】
メガネ流失(新メガネ10,000円)
今までのメガネはレンズの傷が多くなっていたので、更新時期になっていたとして実質的には損失無し(半分は負け惜しみ)
時計(バネ軸部のプラスチックカバー損失)
なくても使えているので実質的には損失無し(半分は負け惜しみ・・・そのうちに買わせてね。天女さま!)

【肉体的損傷など】
1.右手親指の第一関節部の皮が剥けた(直径約1cm)
2.左手拳の小指部分の皮が剥けた(直径約1cm)
3.右足ひざから上の太ももの擦りむけ(軽度)
4.膝から下の打撲、擦り傷数箇所(岩などにぶつけた為)
5.足指爪の壊死(数日後、人指し指は両方とも真っ黒に、左足中指は部分)
筋肉痛も火曜日には治ったので、肉体的なダメージはそれ程ではなかったように思いますが、内臓疲労(見えない分怖いので)を考え次週は登山を控える事にしました。
(実際は、土曜日に雄琴温泉で宴会があり、日曜日朝は2回目の草刈奉仕作業があるので行きたくても行けないのでした。日曜日は4時半に起きてホテルを出発し、7時20分頃に家に帰り作業に出ました。)
木曜日だったか、なんでもない動作をしてぎっくり腰になりました。温泉に入れば治るかもしれないと思って3時間程運転して行ったのですが、さらに悪化しヨロヨロとしか歩けないようになりました。これが肉体的ダメージの最たるものだったと思います。(ぎっくり腰は癖になるといいますが、その後は再発していないので、登山による極度の疲労が原因だったのではないかと思っています。)
【健康効果】
日曜日夜に測定すると体重が出発前の1kg増しでした(水分の多量摂取によるムクミ状態だと思っています)が、月曜日には1kg減に!
体脂肪率も脅威の21.9%。確かに腰周りの脂肪が薄くなったような気がします。
栄養学では脂肪1gは9キロカロリーで計算しますが、体脂肪には約20%の水分が含まれていますので、実際には脂肪1グラムは7キロカロリーの運動で燃焼させることが出来ます。
この超おバカ山行の全消費エネルギーは最初に計算したように、約14,600Kカロリーで、食料はほとんど食べなかったので、体脂肪2kg分=14,000Kカロリー近くを消費したのではないかと考えます。
錆鉄人の体脂肪率は通常24.5位だったので72kgをかけて約17.6kg、これが2kg減ったとしたら15.6kgであり、体重71kgに対して体脂肪率は22.0となり、実測結果とほぼ一致します。
(ただし、連日のビールなどですぐにリバウンドしたと思われます)

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