標高差2,240m天女の早月尾根日帰り 剣岳

07.08.25

剣岳(2,999m)

剣岳は3,000mを越えているのではないかという声があって
数年前に再測量される事になって
結果1.5m高くなったが、残念ながら3,000m峰に届かなかった。
しかし、3,000mなくても
雪と岩の殿堂の称号は色あせる事はない。

天女に「今度は雪と岩の殿堂、剣岳に登ろう」と言ったら
「雪と岩の殿堂なんて怖い所には行かない」
と言うので、
上市町のホームページの老若男女が登っている写真を見せて
やっと天女でも登れそうだと納得したようであった。



どうやって行くの?
福井北ICから立山ICまで143km、上市町経由で26km走れば馬場島ですが、ETCの通勤半額の活用がミソになります。
我が家から福井北ICまでは約20km、35分と考えると、100km先の小矢部まで1時間かかるので、午後8時前に乗り換えるためには、6時20分頃には出発しなければなりません。
しかし、天女を急がせても毎回午後7時頃に出発するのがやっとの状況、15分で着く鯖江ICから乗っても
ETC半額の乗り継ぎは出来ないと思っていたのでした。


しかし、錆鉄人の柔軟な頭脳は、ここで逆転の発想が浮かんだのでありました。乗り継いだ後を100km弱にすれば良いのだと!
という事で、福井北で乗ろうと、鯖江ICで乗ろうと、小松ICで乗り継ぎし、立山まで97kmを走れば良いという事です。時間があれば、70km2本に分けたほうが安くなるのかどうかまでは計算していませんが、ほとんど差はないだろうと思っています。
早月尾根
登山口の馬場島の標高は760m、剣岳は2,999mなので標高差は2,240m、日本の3大急登の中でも群を抜く標高差の早月尾根を往復するのが今回の登山です。
剣というと室堂経由の1泊2日が一般的ですが、室堂へのアクセスがない冬場には、このコースが剣岳登山のコースとなっているばかりではなく、夏山シーズンも錆鉄人のようにお金と時間がない人の日帰りコースとして秘かな人気のコースなのでありました。
(登山シーズン中は、室堂からのコースは大混雑でカニのタテバイ・ヨコバイなどで1時間の待ちも珍しくないとか・・・。錆鉄人には耐えられない事です。)

錆鉄人はこの早月尾根をかなり前に登っています。まだ、百名山を始めた頃でしたが、三大急登、しかもクサリ場の連続する難コースと紹介されていたので、先行者に追いついた所で一緒に歩きました。結局岩場は一人で登ったので、何のために一緒に行ったのかわからなくなりましたが、それだけ用心して登っていたのでした。(岩場は何処が難所か分らない間に通過していましたが・・・)
錆鉄人的には頑張れば、上り3時間半、下り2時間半という所でしょうか。でも今回は天女をエスコートして、安全登山に努めるつもりです。
一応4時出発で頂上到着10:30休憩30分、登山口16:00の計画です。早月小屋には13時30分頃には戻る予定なので、午後の落雷があっても安心だろうと思っています。
このコース、折立から黒部五郎・鷲羽岳・水晶・雲ノ平1周を幕営の1泊2日を余裕でこなした天女ですから、そう問題のない距離だと思っています。
天女の説得
天女は岩場の通過は苦手です。横が切れ落ちた斜面の通過も嫌いです。落ちたことは一度もないのに「落ちたら死ぬから」と言います。
良く言われますが、本当に危険な岩場で遭難は起きないもので、そういう所を通過して気を抜いて転落するケースが多いようです。このルートもそのような解説を読みました。
さて、何れにしても、その後も「怖い、行きたくない」を連発する天女を説得しなければなりません。

という事で、早月尾根コースの登山記を調べ、いかに普通のおばさんが登っているかを見せて、これなら私だって!と思わせる事に努める錆鉄人でありました。
そして、最後の詰めはロープです。「危なそうな所はロープで身体をくくって持っていてあげるからね!」(必要とは思いませんが・・・)
という事で、アルペンに買いに行ったのですがありませんでした。そこで我が家に伝わる麻のロープを洗って(ホコリだらけだったので)準備する錆鉄人でありました。(昔、材木を引っぱり出すのに使ったものなので、とても丈夫。数百kgは持ちそうです。)
装備
早月尾根はロングコースなので装備品の軽量化が重要です。
それと、登山ルートには水場が1か所もないので飲料水を十分に持つ必要があります。(天女がいつもザックに下げているマグカップも外して100gでも軽量化に努めました。)
一応2人で6リットル持って行き、下山時に足りないようなら早月小屋で購入しようと思っていました。(小屋では水2Lで700円とか!でも命と同じ位の価値のある水ですから)
早月小屋から番場島までが森林の中ですが、西日で蒸すので、ここからで大量の水が必要だろうと思っています。

天女の登山靴を積み込もうとしたら、何と靴底が半分位?がれているではありませんか!天女だったら気付かずにそのまま積み込んで登山口で立ち往生していたに違いありません。予備のトレッキングシューズを積み込んで事なきを得ました。

実際に持って行ったのは、500mLのペットボトルが足りなかったので水4.9Lとビール1本となりました。帰りの小屋で購入すれば良いので、これで小屋までは十分に持つという判断でした。
この中で、900mLペットボトル1本と500mLペットボトル2本と缶ビールは冷蔵庫で凍らせたものをレジャークーラーに入れて持って行きましたが、出発時もほとんど凍っていて、そのままレジャークーラーに入れたままザックに入れて登山したので、下山時も冷たい水が飲めました。勿論、山頂のビールも飲み頃の冷たさで大満足でした。
出発
自宅を午後6時50分頃に出発。
予定通り鯖江ICで高速に乗り、小松ICで乗り継ぎして、通勤半額をW利用。立山ICで下りた最初のコンビニで食糧を買いましたが、おにぎりの賞味期限が25日午前1時のものが少しあるだけでした。田舎者なので胃腸の丈夫な錆鉄人ですが、賞味期限の切れたものをザックで蒸して半日後に天女が食べるのは心配だったので、登山の食料はパンだけで対応することにしました。ここで寝酒用にビール500mLを2本購入。(錆鉄人の健康を気遣う天女なので、我が家には凍らせた1本しか在庫がなかったのでした。)
しかし、カーナビの指示通り走ると、上市町役場の前などメインルートを通る設定で、その後もコンビニがあり、2つ目のコンビニにも入っておにぎりを購入しました。コンビニはその先にもありました。
最後の数キロは狭い道路ですが、夜間対向車があるはずもなく、安心して走行できました。

ほぼ予定通り9時半過ぎに番場島に到着。ビールを2本飲みましたが、車が来るたびに目が覚めて、あまり寝れませんでした。(天女はいつも通りぐっすり)

という事で、アラームをセットした3時半よりも早く3時に起きて出発の準備をしました。


3:26 「剣岳の諭」の前で記念撮影
サロマ湖100km完走Tシャツです
登山道
4:22 1,200m地点を通過

この山行記は登山道の様子をメインにしていきます。花の写真などは他の山行記を参照願います。


5:00 標高1,600m地点
ヘッドランプはこの辺りで外しました
クーデター
天女は24日も休みだったので、田圃のヒエ採りで相当に疲れていたようです。そうとは知らない錆鉄人は、脚の運びなどを注意していましたが、突然、「もう、登りたくない!」と言って立ち止まりました。
「勝手にしろ」と言って先に進もうとすると、車に戻って待っているから鍵を頂戴というので、厭だと言ったら諦めて登り始めました。でも、錆鉄人はこの時点では単に駄々をこねただけだと思っていたので、天女がそんなに疲れていたとは知りませんでした。

2人は気まずいムードのまま、黙々と登って行きました。

三角点
登山道のどまん中にある三角点。

短気なので腹を立てた錆鉄人ですが、淋しがり屋なので、気まずいムードのままで長時間耐えられないのでありました。
すぐに深く反省し、天女の調子を気遣いながら続きます。

標高2000m
6時ちょうど、早月小屋まで1kmと表示されています。
疲れたを繰り返す天女に、小屋まで行って大休止しようと言いました。


あの向こうが小屋だからね、と言いましたが、最後に右の写真の急な登りがあったことを忘れていました。ここは、トラバースルートを作ってほしいですね。
池は枯葉等で腐ったような汚い感じです。



すぐに削れそうなザラザラの岩肌
雨で砂が洗い流されたかスリップの心配はありません
早月小屋
登りきって、やっと早月小屋が見えました。標高で50mもありませんが、番場島から頂上の標高差2,240mに、往復加算されるので勿体ない下りです。
とはいえ、下りはスイスイの天女です。

休憩
という事で小屋に到着。表は陽が当たっていたので、小屋の右手(裏)のほうに回って腰をおろしました。おにぎりを取り出して食べだしたのですが、小屋の横の発電機から排ガスが流れてきて臭いので、キャンプ場の奥の山影に移動しました。
標高では1/3しか残っていません。標識を見る限りでは、この先のほうが平均斜度はやや低いようですが・・・


テントは2つ、
1つはポールを抜いてありました
登山道
早月小屋から0.8km地点。
小屋からは、また日蔭の登山道なので日焼けを気にする天女には好都合です。


立山室堂

室堂向かうバスが見えます。


小屋からかなり登ってきました
登山道


まだ険しい岩場はありません
登山道


かなり登ってきた事が分ります
ワンセグ
   
NHKの朝の連続テレビ小説「どんと晴れ」にはまっている天女(錆鉄人も)の為に、稜線で携帯のワンセグを受信して見ようという計画でしたが、8時5分頃には尾根の裏側にいたので、錆鉄人は「あの山を越えれば受信出来る所があるかもしれないから、先に行って受信出来るようにしているから」と行って、走るように尾根を越えたのでありました。
というのは、ワンセグは福井での受信がメモリされているので、富山の電波を拾った場合には切り替わる必要があるので、受信出来るまでに1分程度時間がかかるのです。天女が来たらすぐに見れるようにスタンバイしておくという愛妻家の錆鉄人ならではの心遣いでありました。

   
ところがその先もまた尾根の裏側。錆鉄人は受信できそうな所を探してどんどん先行しましたが、天女はすでにフラフラ。しかし、どんと晴れを見たい一心でなんとか歩いてきていました。結局受信できそうな所が見つからずに、携帯で受信を試みましたが、駄目でした。もう8時15分は目前でしたが、錆鉄人は走ってもう1山超えましたが、やはり受信出来ません。天女を待ちましたが、ふらふらの天女が必死に歩いて追い付いてきたのは8時23分にもなっていました。
どんと晴れを見られないので落胆し、疲れが倍加した天女は、ここで食糧を口にしましたが、回復しません。ここからは10歩か20歩歩くと岩にもたれかかって休憩するようになってしまいました。
頂上まで0.7km

岩場が多くなった上に、10歩、20歩毎に休憩するのですから、気の遠くなるような時間をかけてようやく2800m地点に到着。


頂上の登山者が見えます
工事中
鎖場に腰をおろしている人が見えました。何であんな迷惑な所で休憩しているのかな?と思いながら鎖場に近づきました。すると、抜けたボルトの修理をされている所でした。

速乾セメント(接着剤)でボルトを埋め込んだ所
(後に修理後の写真有り)
工事中2

「ご苦労さまです。」と言って通り過ぎようとしたら、早月小屋に戻るかと聞かれました。「頂上に登った後戻ります。」と答えたら、小屋の人に鎖の修理が終わったと伝えて下さいと言われました。
という事で、ここで錆鉄人は帰りには「(ビールを買うために)どうしても早月小屋に立ち寄って工事完了を報告するという使命」を帯びたのでありました。
最大の難所

ここが有名なボルトに足を掛けて通過するポイントだったのですが、錆鉄人はもっと凄い場所だろうと思っていたので気づきませんでした。ここは右足をボルトに乗せないと渡りにくい所なのですが、左足を乗せてしまった天女でした。でも、何となく渡ってしまったのでありました。岩場の通過もそんなに怖くなかったと言っていましたから、天女の登山能力が飛躍的にアップしたのかもしれません。


→の右150度付近にある光の点がそのボルトです
斜め下に下がって見えます
(帰りの写真を参照)
頂上間近
   
こんな岩のゴツゴツした所では、必ず文句を言った天女ですが、もう慣れてしまったのでしょうか。無言で取りついて行きました。


鞍部から別山尾根の登山者がよく見えます
カニのヨコバイ地点です
鎖場の連続

次々と鎖場にチャレンジする天女


振り返ると険しい尾根の連続です。
天女もすごい所を登ってきたものです
鎖場の連続

天女は疲れ果てているので
先に登ってもらいました
落石も怖いので少し間を開けて登りましょう


錆鉄人のカメラに反応する習性なので、
「こっちを見て」と言うと振り向く天女。
下は目のくらむような断崖絶壁でした!
工事中

「きっとこれが最後の鎖だよ」
と言ったら、まさにその通りでした。


カニのヨコバイも下になって
奥は立山三山です
頂上の稜線
最後の鎖場を登ると、岩がゴツゴツした稜線に出ます。数重メートル先に室堂方面からのルートの分岐標識が立っていて、その先に剣岳の頂上が見えています。もう、登りはほとんどありません。
天女も慣れたもので、スイスイと岩の上を歩いて行きました。

頂上 10:10

疲れていたのに
天女は本当に凄い


軍手がトレードマークです
ちゃんとした手袋も買ってあるのですが・・・
頂上からの景色
鹿島槍ヶ岳
メチャ、カッコイイ!


真ん中に薄く見えるのは富士山!
(親切な人が教えてくれました)
上が平らなの?と天女は言いますが
天女なので富士山は見た事がないのでしょう
頂上にて
はるばる下界よりペットボトルとビールを凍らせて持ってきたのでしたが、1晩越してもペットボトルはまだ氷が残っていて、ビールも冷え冷え!
という事で、少し離れた所で食事にすると、登ってきた男性が隣で携帯を出して救助を要請し出すではありませんか!カニのタテバイの所で男性が滑落して、連絡を頼まれたと言っていました。


剣らしい景色
勇気を奮って!

絶景に立つ天女

岩の後は絶壁なので
一番前にしか立てない天女でありました

苦労した剣岳でしたが
天女は剣に登ったという事に
凄く感動していました。


源次郎尾根を覗き込むと
登ってくるパーティがいました
頂上の様子
ワンゲル部と思しき一団が去った後は、中年登山者の群れに占拠される頂上でありました。

下山方向
標識が早月尾根への分岐
下山開始
という事で、11:08 下山開始
頂上滞在は58分でした。


落ちたら停まる所がありません
救助ヘリ
バタバタと音がするので、救助ヘリが来たことが分りました。
ホバーリングを続け、やがて救助隊員がロープで下りてきました。岩の上には滑落した人のグループの人でしょうか?立ち上がって合図をしているようでした。
翌日、Yahooの山岳遭難を確認すると、東京の30歳?の男性で足を骨折したけれど、命には別状なかったようでした。普通のおばさんでも難なく通過している所で滑落するとは・・・地下鉄の階段でも滑落するような人ではないかと思いました。(一般論としてです、滑落する特別な事情がなかったとは言い切れません。)

ボルト箇所
問題のボルト箇所も、下りる場合はその先も良く見えるので、どうってことはありません。天女は何の苦もなく通過するのでありました。天女は鎖に対する信頼感が篤く、このような絶壁でも鎖があれば怖くないようでありました。
心配した疲れも貧血が主体だったようで、足にはきていなかったので安心する錆鉄人でありました。
という事で、はるばる持ってきた麻縄でありましたが、ザックの中で重石となっていただけでありました。


この写真ではボルトが分りますね
工事完了
工事も完了していましたが、なぜかザックが置いてありました。

鎖を切って留めたようです
奇岩
ずっと遠くでしたが、ウサギの耳のような岩が立っていました。
まだまだ油断できない下山路です
2800m地点
上の写真と順番が違うかも?

慎重に下りればどうって事ありません
下り
上から見ると結構すごい

下りでもワンセグを試しましたが、
やはり受信出来ませんでした
登山口に戻る
以下、撮影中は気付かなかったのですが、デジカメの設定がおかしくなっていてまともに写っていなかったのは残念でした。
と思っていたのでしたが、カメラが故障してしまっていたようです。能登一周旅行で故障に気が付きましたが、後の祭り、写真は1枚もまともに写りませんでした。(後日買い替えました。)
登山口に下りたのが午後4時3分、観音様にお参りしたりしてゆっくり車に戻り、トイレの洗面所の水でタオルを濡らして身体を拭き、車に戻って出発しました。
登山の後は、探しておいた焼肉屋さんで氷見牛を食べる予定でありましたが、天女は19時半から放送されるBS2のどんと晴れを見たいというので、直帰し19時15分頃に帰宅しました。(錆鉄人は決してお金を使わないでおこうととしたわけではありません。)

登山記録

登山開始 3:26
早月小屋 6:38(休憩12分)
頂上    10:10
下山    11:08
早月小屋(修理報告とビール購入、15分程休憩)
登山口  15:59

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