超絶日帰りPart2 悪沢岳・赤石岳
計画の巻

06.09.02

悪沢岳(3,141m)赤石岳(3,120m)日帰り計画

南アルプスでも未踏の山は赤石岳のみとなってしまいました。
赤石岳に登る場合は90%以上の人が椹島から登ると思われます。
椹島までの林道18.5kmにはバスがありますが、
これは東海フォレストの山小屋の二食付宿泊者しか乗せてくれないという代物です。
つまりこの山域で幕営するという事は林道18.5kmを歩いて来たた強者か、
以北、または以南からの縦走者(これも強者)という事になります。

椹島から荒川岳・赤石岳と回る周回コースは
コースタイムは20時間10分、累計高低差約3,000mです。
これだけなら錆鉄人にとって十分日帰り可能な数字ですが、
これに畑薙第一ダムからの林道歩き片道18.5kmがあるのが問題です。

錆鉄人の場合、林道歩きならザックを担いでいても
18.5kmで4時間程度と計算出来ます。
登山のコースタイムは6掛と計算して10時間半
林道歩きが往復8時間の合計18時間半で完了出来る計算になります。

福井から定時に仕事を終わってそのまま走ってきたとしても
畑薙ダムの駐車場に到着するのは午後12時頃と想定され
朝4時に出発すれば午後10時半頃に車に戻れることにはなりますが
人っ子一人いない真っ暗闇の林道を4時間も歩くのは怖い・・・

という事で、
林道を自転車で走行すれば時間が短縮出来る
と考え、研究を開始したのでした。

どうやって行くの?
最短時間のルートとしては、会社を定時に終わって鯖江ICで高速に乗り、相良牧の原ICで下りて(295km)R473を北上し、一般車両の通行止めゲートのある沼平まで100km余り。
曲がりくねって狭い山間道路の通行が多いこともあり、一般には3時間程度かかると書かれています。夜間走行なのでアベレージは上がり2時間半と想定しても、合計では6時間となり、沼平に到着するのは真夜中寸前と思われます。


【コースタイム】合計30:40(椹島までの林道を除く20:10)
畑薙第一ダム(沼平)−6:15−椹島−6:15−千枚小屋−1:40−悪沢岳−2:30−荒川小屋−2:40−赤石岳−5:05−椹島−5:05−畑薙第一ダム
畑薙第一ダムから椹島までは林道歩きが18.5kmあり、一般的には東海フォレストの送迎バスで移動しますが、東海フォレストの管理する山小屋に2食付で宿泊する登山者でなければ乗せてくれません。
金無し錆鉄人は、その宿泊費も削りたいので、何とかこのコースの日帰りを目論んでいるのですから、当然送迎バスの乗客たりえないのでありました。
椹島からの送迎バス
【先入観】
東海フォレストというのは、この辺りを仕切っているマフィア(悪逆非道な存在)のようなもので、山小屋を経営して儲ける為に山小屋宿泊者しか送迎バスに乗せないのだと錆鉄人は思い込んでいました。従って、そんな会社の世話になるのは絶対に嫌だと思っていたのですが、いろいろ調べてみると、それは錆鉄人の誤解だったという事が分かりました。ここに謹んでお詫びいたします。

実際には「東海フォレストの山小屋はきれいで食事も良い」と言われていて、登山者の為に良くやってくれていると思います。(日帰りの錆鉄人は利用したことがありませんので)

【噂の真実】
別に噂ではありませんが・・・
畑薙第一ダムから上は「林道」であり、「林道では乗客を運ぶという運送行為(白タク)はしてはいけない」というお上のお達しがある為に、小屋泊まりのお客様へのサ−ビスという形で送迎を行っているというのが本当のようです。
しかるに、同じ南アルプスでも夜叉人峠から広河原へのルートや長谷村の渓流荘から北沢峠へのルートなどは「スーパー林道」なので運送行為が可能という事です。同様なサービスを平ヶ岳でも行っているようで、様々な物議をかもしています。
それならば、「ただの林道とスーパー林道とはどう違うのか」というと、本当は大きな違いはないのではないかと思われるのですが・・・
林道の自転車走行について
問題は、この林道をどの程度自転車で走行出来、時間短縮が可能かという事です。
「ウォッチズ」でルートの2万5千分の1地図をみましたが、畑薙第一ダムの沼平ゲートが標高950m程度、椹島の標高が1,123mと標高差は僅か170m程しかありません。ただし、途中でもアップダウンはあるようなので、自転車に乗って進めない所が2割位はあると想定しました。
05年の11月に至仏山に登った時は、(道路が閉鎖されていたので)戸倉スキー場ゲートから鳩待峠まで10.8km標高差530mを一部自転車に乗って1時間30分で到着しましたが、この時のように全線舗装されているなら問題はありませんが、ここは舗装はされていない上に、かなりの悪路という情報もあります。
そこで、例によってWebでの検索と掲示板での質問をしてみました。ル・クルプ登山隊リングのHPの掲示板に「教えてください」という事で出した所、すぐに中山さんという方からの書き込みがありました。2年前にバスで移動されたようですが路面状態に関しては分からないとの事でした。一般にバスに乗ったら居眠りするか隣の人とおしゃべりするか等していて、道路がどのような状況なんか関心を持たないものです。

Webの検索では、自転車で大井川を遡行して魚釣りをしている人の記録がみつかりました。現実に自転車を利用している人がいるというのは心強い情報です。

さらに、登山に自転車を利用した人の記録としては、赤石ダム取り付き(ダムの上りが急な為ここで自転車利用を諦めている)まで折畳み自転車で1時間半というものがありました。(タイヤサイズは不明ですが、折畳みなら8割方錆鉄人と同じ20インチだと思います。)小屋泊まりで無線機携帯という事なので15kg以上の装備を担いでいたはずです。
赤石ダム取り付きの急坂は距離約500mで標高差50m程であり、赤石ダムの湖岸まで上がってしまえば、椹島まではほぼ平坦で距離は約3.5km、急坂を15分残りを15分と考えれば、2時間で椹島に到着することになりますが、余裕をみて2時間15分と計算することにしました。(その人は、帰りを1時間で下っているので椹島からは1時間半で戻れそうです。)

さらにwebで様々な検索をしてみたら、バイクを抱えてゲート横を無理矢理突破した人がいて、路面の写真(下)がありました。
彼は自転車はパンク注意と書いていましたが、下りで飛ばさない限りパンクの心配はほとんどないのではないかと思います。(錆鉄人は、礼文林道と同等か、それよりややマシではないかと思いました。礼文林道は砂利に覆われていて自転車が立たない所が結構あったからです。)また、路面の凸凹も予想よりは少ない感じなので、20インチの折畳み自転車でも問題はないように思われます。ただし、今年の状況はまた違っている可能性がありますが・・・。


まだ暗い間に出発する事になると思われるので、強力なヘッドランプで走行部分を照らす必要があります。
登山ルートについて
錆鉄人は椹島から悪沢岳→赤石岳→椹島と回るか、椹島→赤石岳→悪沢岳→椹島と回るかを悩みました。
ルート的には後者の椹島から赤石岳への登山ルートが険しく、そのためはこちらのコースで1周するほうが1時間程長くなっています。という事で、ガイドブックは悪沢岳に先に登るルートで千枚小屋と荒川小屋に宿泊する2泊3日の周回コースとして紹介していて、登山者も8割方はそれに従っていると思われます。

という事は、錆鉄人も同じコースを進めば夥しい登山者が前方を遮っているという事であり、快速登山の妨げになる事が予想されました。また、錆鉄人の登山スタイルの場合、険しいコースでは登りも下りもそれ程時間差がなく、もし想像以上に疲れた場合にも千枚小屋からの緩やかな下りのほうが歩き易いのではないかと考え、赤石岳先回りのコースで登る事を考えていました。
しかし、実施時期が9月2日となったことで、登山者はめっきり少なくなっていると思われるので、順コースの千枚小屋回りで行くことにしました。

【飲料水の確保について】
この周回コースは基本的に水が豊富で、荒川中岳避難小屋と赤石岳避難小屋を除いた3つの小屋以外にも、3箇所の給水地点があり(計6箇所)、給水区間は椹島から赤石小屋のコースタイム4時間20分が最長のコースタイムです。この区間を登るのは早朝でもあり、それ程ノドが乾かないと思われるので、飲料水としては500mLあれば通過可能と思われます。しかしながら、アクシデントでサイドポケットからペットボトルを落とさないとも限らないので、もう1本を予備として合計100mLを持っていく事にしました。

順コースの場合
やはり1Lあれば十分だと思われます。
計画その1.椹島でテント泊
福井から終業後ほぼ6時間運転を続けて3時間程度車中泊し、暗いうちに出発して椹島まで2時間半自転車を押して行き、それからこの周回コースを10時間程で回って椹島まで戻り、自転車で車まで戻る)というのは、かなり「危ないレベル」のムチャのような気がしました。
なにせ錆鉄人は登山中は疲れたとか痛いとかいう人命保存の為の安全弁が壊れているとしか思えないので、自主規制をかけないと本当に命が危ういのではないかと思っています。
天女が「お父さん、先に死なないでね!」と言っているからではありませんが、錆鉄人とてまだこの歳では死にたくはありません。

という事で、金曜日に仕事が終わった後、車を走らせて畑薙第一ダムまで行き車中泊する所までは一緒ですが、もう少しゆっくりと寝て、土曜日はゆっくり自転車を押して椹島まで行き、悠々とテントを張ってその日は休養を取って、翌朝暗いうちに出発して早く椹島に戻り、温泉にも入って疲れを取って、車中泊しながら月曜の朝までに家に帰って(ETC深夜割引の活用)仕事に出るという計画を立てました。
椹島は車で入れる登山基地なので、山での宿泊の範疇ではないと考えられますので、これで赤石岳と悪沢岳の日帰りが実現するという事であります。
そういう意味では長衛小屋も車で行ける北沢峠にありますが、長衛小屋はどう考えても山小屋の範疇なので、ここで幕営したという事は日帰りにはならないと言われても反論出来ないと錆鉄人は思います。従って、何れ仙丈ケ岳も日帰り登山に行かなければならないのでした。

計画その2.車中泊早朝出発
椹島での幕営計画を立てたものの完全日帰りに未練が残ります。新穂高から鷲羽岳・水晶岳の日帰りや、2日で幌尻岳・トムラウシの合計37時間を越えるコースを走破し、自信が付いたこともあります。
椹島まで2時間15分程度なら、若干時間を早めて出発して
そのまま車まで戻っても、それ程大差がないのではないかと思いました。
幕営の場合、下記のようにどうしても5kgは重いザックを担いで自転車を押すことになります。(ただし、登山時はそれらの装備は置いて行くので、実質的にはテント等を入れるために大きなザックとなる事によるザックの重さの差になります)またテントの撤収にも30分位は掛かると思われます。
もう一つ重要なのは行動食です。土曜日幕営の日曜日登山の場合、金曜夜にコンビニで買った食料はほぼ賞味期限を過ぎます。パンは賞味期限があるかもしれませんが、錆鉄人は「飯豊山のパン地獄事件」以来、パンがあまり食べられなくなったのでした。

という事でいろいろ考えると、初の目論見通りその日のうちに車に戻ってしまうことが良いようにおもわれます。
尚、国立天文台のHPから求めると、この付近の日の出は5:13、日の入りは18:08と出ました。前後30分は一応明るいと考えられますが、出発が暗いのはだんだん明るくなるので良いが、帰りに暗くなると不安が増すものであり、出来るだけ早立ちをしたいと考えました。

という事で、
駐車場を4時15分出発(30分ヘッドランプ)
   暗い間は怖いのですが・・・
6時半 椹島到着、
(コースタイム11時間設定)
17半時に椹島に戻り、
19時半車に戻る

というスケジュールを立てました。これはかなり確度の高いスケジュールで、怖いのは
熊との遭遇だけです。(天女の加護を信じるしかありません。)
装備は完全に作っておいて、出来れば15分でも早く出発したいと考えています。
装備
装備に関しては自転車に乗る関係もあり、当然ながら極力軽量化を計る事にしました。
【幕営装備】
テント:2kg
テントマット:0.6kg
寝袋:0.6kg
コンロ・ガスカートリッジ:0.5kg
コッヘル(チタン1+1):0.3kg
食料(ラーメン・α米3食分+食堂利用):0.5kg
行動食(パン、1食は小屋食堂利用):0.3kg
非常食(行動食兼用):0.6kg
雨具(防寒具兼用):0.7kg
長袖ボタンシャツ:0.3kg
非常用装備等(エマージェンシーシート等):0.5kg
水(自転車移動時も):1.1kg
ザック(登山時を考え30L)1.5kg

ストック:0.8kg
ラジカセ(熊避け):0.35kg(携帯ラジオは音量が小さいい)
ヘッドランプ:0.2kg
財布・鍵:0.2kg

合計:11.3kg(6.6kg)
青色は登山時の装備で、テントなどは椹島にそのまま置いて登山し、下山後撤収します。一番重要なビールも小屋で調達し軽量化に努めます。
【幕営なしの装備】
ザック小型化→-0.8kg
ラジカセ携行止める→-0.35kg
(歩行中に音が聞こえないのは逆に危険)
行動食(小屋食堂利用しない)→+0.5kg
以上より、日帰りの装備は約5.9kgとなります。

【服装】
短パン(いつものマラソン用):90g
登山ズボン:300g(自転車走行時以外はザックの中)
Tシャツ(いつものマラソン用):100g
帽子:50g
腕時計(PROTREK!):70g
数珠:5g
靴下:120g
登山靴:800g
合計 : 1,535g

一方、体重は72kgであり、どう考えても装備の軽量化よりも体重の軽量化のほうがはるかに有効で、大きな可能性がある事は勿論ではありますが・・・。
このコースでの登山の場合、膨大なエネルギーを必要とし、これらはとても食事から補う事は出来ません。
つまり、錆鉄人の脂肪はそのための重要なエネルギー貯蔵庫なのでありました。(言い訳)

自転車走行時は石や穴でコケル可能性もあるので、怪我防止の為にズボンを履いて走行し、登山時も登り始めの低山にはヒルがいるという説もあるのでズボンを履いているつもりです。(雨具のズボンで兼用したいのですが、まだ穴を開けたくないのでした。)
ヒルにはヒルまず、短パンで登るかもしれません。
食料について
一般的な登山の場合、1時間の消費エネルギーは体重1kg当り8Kカロリーといわれているので、錆鉄人の場合(72kgとして)1時間で576Kカロリー、全コースでは17,000Kカロリーを消費する事になります。(ただし、自転車利用によって低減されるので15,000Kカロリー程度と思われます)
ちなみに、マラソンの場合は体重1kg1時間当り12Kカロリーと言われているので、フルマラソンを4時間として3,456Kカロリーにしかなりませんので、ほぼ4倍のエネルギー消費であり、如何にこの計画が無謀であるかという事の証拠かもしれません。
マラソンの場合は、1時間当たりではなく距離1km当りの消費エネルギーを比較すると、遅い人も早い人もほぼ同じ消費エネルギーだそうです。従って、登山の場合もマラソンの場合とほぼ同等と思われるので、実際の登山時間にかかわらず、コースタイム×時間当たりの消費エネルギーが登山に関しての総エネルギーと考えます。
2倍の速度で歩くから2倍のエネルギーを消費するかどうかは正確には分かりませんが、山で会う皆さんがシャツの上にジャケットまで着て登っている時でも、錆鉄人はTシャツ1枚で汗だくになっているので、消費しているエネルギーの量は大きな差があることは間違いありません。

という事で、この膨大な必要エネルギーに対して、食料によるエネルギーの供給が重要であると結論付けられると思いますが、錆鉄人はかつて飯豊山のコースタイム17時間を菓子パン1個で日帰りしたというムチャクチャな実績もあります。世の中には「シャリバテ」という言葉があって、食事をちゃんと取っていないと半日後には動けなくなる人がいるらしいのですが、錆鉄人は今年に入って越後駒ケ岳・巻機山を日帰りした時も、天女と早池峰山・岩手山を日帰りした時も、1食分位しか食べていません。新穂高から鷲羽・水晶の日帰りも、幌尻岳、トムラウシも平均して1食分以下しか食べていません。(というか、食べられなかったのですが)
従って、シャリバテという現象も鍛錬によって克服できるという事ではないかと思われます。

【芸は身を助く】
体力を鍛えることも当然ですが、こういうふうに食べなくても行動を続けられる能力を身につけることは、震災などの非常時に大いに身を助ける可能性があります。

錆鉄人は朝食は車で食べて出発しますが、やはり2食分(+非常食)は持って行こうと考えています。
ベンチマーク
今までの日帰り登山において、コースタイムに対する短縮率は山によって0.3〜0.5程度の開きがありますが、これは錆鉄人の調子がばらついていたというよりは、コースタイムの設定自体のバラツキのほうが大きいように思います。(食事付きの小屋がない場合は重装備での行動で設定されています。)また、最近のコースタイムは中高年対象になっているためか、長くなってきているようでもあります。
従って、初めての山を登る場合はコースタイムと共に、ほぼ登山能力の分かっている人の実績をみる事にしています。しかし、登山における区間タイムをしっかり記録している人は少なく、参考に出来る人はさらに少なくなります。

錆鉄人が参考にさせてもらっているのは、而青さん(私の山歩き)です。而青さん(何と読むのか分からないのですが)は日帰りが多く、しっかり区間タイムや休憩タイムが記録してあるので、錆鉄人の実績との比較がし易いのです。
当然バラツキがありますが、平均すれば錆鉄人が2割ほど短い時間で歩いています。このコースを而青さんは一般的な千枚小屋・赤石小屋泊まりの2泊3日で歩いていて、休憩を除いた合計で12時間16分かかっています。毎日リフレッシュして元気一杯歩いた結果なので、通しで歩いた場合とはかなり早い可能性があります。従って錆鉄人の場合、この時間の8掛けで歩くというのは無理かもしれません。
一方、コースタイムは20時間10分(参照する資料によって違いますが、昭文社の登山地図が一般的と思われます。)であり、錆鉄人は普通は半分以下で歩きます。半分とすれば10時間05分です。6掛けなら12時間06分となります。
という事で、
錆鉄人の日帰りヘロヘロタイムであっても、而青さんの3日で区切った楽々タイムには負けたくないと思い、11時間をコースタイムとして設定しました。

登山編
実際の登山記録は以下をご覧下さい。
 →超絶日帰りPart2 悪沢岳・赤石岳 決行編

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