超高速登山の技術

百名山全山日帰りの為にはコースタイムの半分で歩く必要があります
普通の登山者の2倍のハイスピードで山登り・山下りをするのは容易ではありません。
登山のガイドブックはたくさんありますが、
超高速登山の技術を解説したものはありません
錆鉄人のこの解説が唯一と思われます。(今後、出てくるかもしれませんが・・・)
しかしながらこの解説は、
この内容に従った超高速登山を奨励するものではありません。
ただし、一般の登山ガイドブックにある技術論は間違っているとまでは言いませんが、
それほど役に立つ事が書かれていない(当たり前の事が述べられているのみ)というのが事実であり、
以下に述べる錆鉄人の超高速登山理論を、
普通の速度の登山でも利用したほうが遥かに楽な登山が出来る事は間違いありません。
つまり、普通の事(普通の速度で普通の時間あるく普通の登山)をやっている限り、
そこに問題は発見されず、従って解決策も考えられない訳であり、
本当の意味での解説にも技術論にもなっていないという事です

錆鉄人は相当数の登山解説書を読んできましたが、
それらを書いた人は登山をなりわいとしてやってきて有名になり、
岩登りや氷雪の技術のエキスパートかもしれませんが
普通の登山者(ハイカー)の登山行為の大部分を占める「登山道を歩く」という行為を理論的に考察してはいません

この超高速登山の技術は、
超高速登山に限らず実は普通の登山においても実用性が高い新理論=真理論を述べているのですが、
あくまでも実施する場合は、自己責任において実行してください
従って遭難・事故などが起こっても、錆鉄人には何ら責任がない事を確認願います。


1.登山の常識では超高速登山は出来ない

常識に従わない事は、即ち非常識とは限りません。
常識のレベルを超えた場合に初めて、常識の甘さ・限界・非論理性が見えてきます。
常識を超える理論・技術がそこにはあり、
それは普通の登山を快適にする技術でもあるのです。


(1)歩幅
登山のガイドブックには、
スリップを防ぎ重心を安定させる為に歩幅を狭めて歩くように書かれています。
  ×スリップの原因は歩幅ではないという事が分かっていない
  ×歩幅が狭いと突っ立っているに近く、重心が高くて不安定である。
この場合でも、普通の登山者の2倍のスピードで山登りをする為には、
2倍の速さで足を動かせば良いだけですが
それは即ち「走っているのと同じようなピッチで足を動かす」という事になります。
錆鉄人はかつて、
富士登山競走の練習の為に急坂の走行練習を行い
「1kmで300m登る急坂」を走った場合と早足で歩いた場合で比べてみたことがあります。
走った場合は、速歩した場合と比べて僅か1分しか早くないのに、息も絶え絶えでした。
勿論、上位を狙う人は十分な練習をしているので、急坂でも走る事が出来るとは思いますが
ほとんど練習をせずに出場する錆鉄人は、
急坂を走ったら潰れてしまうと自覚し、自制に努めました。
(というか、しんどいので歩いている人を探して、仲間がいれば歩いていました。)
恐らく登山において、
早足で歩く場合と走った場合のパワー効率は2倍位の差があると思います。
※パワー効率(錆鉄人の造語)
自分の持つ体力・筋持久力・注意力等全ての能力(パワー)の消費効率をいう

以上より、
心肺への負荷を落として長時間のスピード登山を行う為には
歩幅を大きく(必然的に重心は落とし気味になる)歩幅を大きくピッチを落として歩くピッチを落として歩く
事が重要なのです。
もっとも、足の長さは限りが有り(錆鉄人は特に短足です)
普通の人の2倍の歩幅で歩ける訳はありませんから
ピッチも1.5倍位に上げる必要があります。
この練習の為に、のんびり登山の場合でも目一杯歩幅を伸ばして歩く事をお勧めします。
(なお、この段階で登山に不安を感じるなら超高速登山は諦める事です)

(2)慣性力の活用
慣性力の利用を説いた登山解説は見た事がありませんが、
(従って登山においては相対性理論に匹敵する新発見だと錆鉄人は思っています。)
普通の人でも、登山中(下山中というべきでしょうが)に慣性力を感じる場合があると思います。
急な登りを1段1段区切って、体重+装備を足で登ると大きな筋肉への負担を感じますが
スピードを保ったまま通過すれば、ほとんど筋肉負担を感じずに通過出来ます。
ただし、これは数十メートル程度の登りの場合しか通用しないかもしれませんが、
大抵の登山道は急な登りばかりが続くわけでは有りませんから
慣性力を活用して急な登りを終え、
やや平坦になったら急坂による心肺や筋肉への負荷は下がる事になるので、
スピードは落とさずに、心肺や筋肉を回復させながら歩きます。

(3)背筋力の利用(重心移動)
山登りは足の筋力で登るのではないのかと不思議に思われるかもしれません。
上記の慣性力と関連しますが
急な段差に前足を乗せて、この前足でヨイショと体を持上げた場合、
ザックの重さもあって、足には大変な負担がかかります。
これを次のような動きで登る事が、背筋力で登るという事です。
(a)前足を段差に載せ、同時に上体(重心)を前足の上に移動させる
   重心の移動=慣性を利用して前進のベクトルを確保する
(b)後ろ足を引き上げながら、背筋力と慣性を利用して上体を持上げる。(前進させる)
   後ろ足を前に出して着地した時に背筋力を利用して重心を持ち上げても良い。
   そのほうが足への負担は少ない。
(c)後ろ足をそのまま次の段に置き、同時に上体(重心)を慣性力を利用して前足の上に載せる


この一連の動きを慣性力を利用しながら重心が一直線に斜面を上るように繰り返すことによって、
理論的には足の筋力負担は自分の足を持上げるだけとなります。
要するに、片足で全体重を持ち上げるという無理な事をしないという事です。
片足で全体重を持ち上げる事を繰り返していたら
どんなにトレーニングを積んでいる人でも、すぐに足の筋肉が死んでしまうでしょう。
ザックを担いで片足スクワットを何百回、何千回と続けられる人はいないと思います。)
動きを分解すれば、両足を着いた時に背筋力で上体を持ち上げると考えても良い。
ただ、この背筋力で上体(+ザック)を持ち上げる時に、
その慣性力を生かして体全体を次のステップの上に無理なく移動させるように意識して登ります。

重心移動に関しては、足回りの良い車がデコボコ道でも車体が揺れない状態を想像した登山を行って下さい。
実際に試して比べてみれば、この理論の正しさが理解出来ると思います。
上記の慣性力も含め、このような登山の技術理論は今まで見たことがありませんが、
特にこの「背筋で登る技術」は特許申請したい位の偉大な理論です。
(従って、錆鉄人は登山における相対性理論のような大発見だと自己満足している訳であります)
超高速登山に限らず、普通の登山でも応用出来る便利な技術なのであります。
今後、登山解説書にこの理論(慣性力と背筋力の利用)が真似されるようになると思われます。

(4)滑りそうな斜面の通過

滑る前に足を前に出して通過してしまうことが肝心です。(これも慣性力)
「運動理論」(急に高尚になってきましたが・・・)に於いて、移動の基本的な考えは「ベクトル」です。
前進するベクトルと滑り落ちるベクトルの合力が進行のベクトルとなるのですから、
滑りそうな場所では前進のベクトルを大きく取れば、少しは滑っても安全に通過出来てしまうという事です。
滑りそうだと思って滑る斜面に足を置いてじっとしていれば、滑り出すのは当たり前です。
また、人間とはおかしなもので
滑りそうだと思った場合、わざわざ確かめるように足裏を滑らしてみる傾向があり、
一旦滑るきっかけを与えてしまうのですから、ズルズル滑るのは当たり前です。
この理論を進化させれば、水の上も沈まずに歩けてしまうに違いありません?
(錆鉄人には出来ませんが・・・)


(5)靴底(足首)の動き
これはガイドブックにも解説してある事があるかもしれません。
靴底を地面の上で回転させるという事は
地面に対してスリップを誘発している事に相違ありません。
靴底は一旦スタンプを押すように地面に着けたら、
微塵も動かさずに逆足を前に出す歩行技術
を身につけましょう。
1回のスリップは、筋肉に過度の緊張を強いるばかりではなく
狼狽による心理的な負担を含め数十メートル分以上の損失に相当します。
スリップしない歩行技術を身につけるだけで、登山はうんと楽になります。

(6)視線の置き場
自分の足を置く場所を毎回確認しながら歩いていてはピッチが上がりません。
常に視線は数歩前に置き、その間の足の運びを無意識のうちに想定し、
必要な場合(岩がゴロゴロで足元が非常に不安定な場合など)にだけ
足を置く瞬間に視線は動かさずに視野の中の足元を意識します。
視線の位置としては、視野の中で足を前に出した瞬間だけつま先が見えるような感じです。
無論、スリップ必至とか足元が不安定というような険しい場面では
一歩一歩確実に確認しながら歩きますが
登山道のほぼ9割は、このように足元を見ずに歩けると思います。
前方に枝が邪魔をしているような場合でもそれを想定して、
実際に通過する時は枝を見ずに頭を下げて歩きますが、
空間の把握は地面の把握と比べ困難なのかもしれません。
錆鉄人は1歩早く頭を上げてしまい、枝に頭をぶつける事が良くあります。
スピードが2倍だと痛さは4倍になりますが、痛みは我慢するしかありません。
枝には十分な注意が必要です。

登山道を歩いていると、事前に前方の確認が必要となります。
登山者が下りてきていないかとか、登山道が分岐していないか等です。
これは、足を前に出して着地して次の足を着地する間に、顔を上げて前方の確認をします。
着地した瞬間は安定していて、足元を見る必要はないからです。
必要に応じて10歩〜20歩毎に前方を見上げると良いと思います。

(7)休憩
ガイドブックには「50分から1時間程度歩いたら10分程度の休憩をする事が疲れない秘訣」だと書いてあります。
しかしながら、休憩した後は足が重くなる事を経験した人も多いと思います。
折角、心肺機能が最高の状態で活動している時にわざわざそれを止めてしまい、
再起動させるのは効率が悪い
と思います。
休んでいたら時間が掛かりすぎて日帰りが出来ないという事もありますが、
休憩は絶対に必要な事ではありません。
どちらかというと、「言い訳に過ぎない」と思います。
マラソンの場合、休めば「タイムペナルティ」として自分のゴール記録が遅くなりますが
登山には1分1秒という時間的な観念はありませんから
いくらでも自分に言い訳して休憩出来てしまうのです。
錆鉄人の場合、
登山口や分岐ポイントなどでメモ代わりに、
良い景色の所や綺麗な花が咲いている時は思い出の為に
立ち止まって写真を撮りますが、基本的にはこの時間だけが休憩です。
(1回長くて数十秒程度、ほぼ1つの山で50枚から150枚位撮影します)
水分補給はほとんどの場合歩きながら取ります。
別に高価な給水システム(ハイドレーション)は不要です。
サイドポケットのあるザックアルペンのザックが安価で最良、超お勧め!)にペットボトルを入れて
飲みたい時に取り出して飲むだけです。


2.軽量化
高速登山にはザックの軽量化が必須です。
20kgを越える幕営装備を担いで、
コースタイムの半分のスピードで10時間登山を続けられる人はいないと思います。
自分の体重を重力に逆らって高みに持上げる事さえ相当の負担であるのに
必要な装備を担いで山に登るのが登山です。

山岳マラソンというジャンルがあるようで
小さなウエストポーチ1個にランニングシューズ・ウェアで山を走っている人もいて
この場合、究極の軽量化と言えるかもしれませんが、
これは一般の登山者に出来る事ではないので、錆鉄人的には登山の範疇から除外します。
(ウルトラマラソンの一種と考えます。)
一般のマラソンの場合は、
歩く早さの4倍位のスピードでフルマラソンを完走しますが、
山岳マラソンでは一般登山者の登山スピードのせいぜい2倍〜3倍で、
その3倍というスピードもほぼ平坦な登山道の所のみといえます。
装備重量はほぼ0、休憩もしないという条件を考えれば早いのは当たり前ですが、
コースタイムの25%というような記録を見たことがありません。
その一番の理由は山岳路というコース状態に起因すると思いますが、
山岳マラソンに「日本記録」などのような公式タイムというものがなく、
他人とは違った山岳マラソンをしているという自己満足だけしかない事も原因ではないかと考えます。
(タイムを意識した山岳マラソンを実行したら本人のみならず
 一般登山者にも危険が及ぶと思われますので、絶対に一般登山道でおこなわないで下さい)

さて、この山岳マラソンの場合でも、
その目的にあった必要な装備は持っていると考えられますが、
この必要な装備とは基本的には「自分の生命を維持するために必要な装備」と言えます。
山岳マラソンの場合は、天候や所要時間を計算して水以外持たない事もあるようです。

登山には天候の急変や高度による体調の変化など様々な不確定要素(リスク)があり、
登山の解説書には登山の解説書にはそれらに対応出来るように様々な装備が
(生命維持の為に必要な装備として)リストアップされています。

しかしながら、そのリスクは毎回の登山条件(天候やコースタイム・水場や小屋の有無など)によって
装備の内容・量が違って来るはず
ですが
一般の登山者は、ガイドブックに従って「大量の不必要な装備を担いでいるのが実情」だと思います。
ガイドブックの場合は当然ながら、
その内容に従って登山したら遭難したと言って責任追及をされないように
超安全サイドでの装備の携行を指導しているものです。

別途、軽量化に対する錆鉄人の考察を記述します。

3.薄着
薄着は技術ではないといわれるかと思いますが、
一般に「登山者は厚着をしすぎている」と思います。
錆鉄人と天女が下着とボタンシャツで登山しているような時でも、
上下にカッパを着こみ、御叮嚀にスパッツをして・・・と、皆さん画一的な服装です。
まあ、登山もファッションと考えれば・・・皆さん一流ブランドを着こなしていらっしゃいますから!

コースタイム半分のスピード登山の場合、普通の登山者の2倍以上のエネルギーを消費します。
  ※フルマラソンを走った場合の体重1kg辺りの消費エネルギーは
    ゴールタイムに係らずほぼ一定であると言われています。
    登山でもほぼ同様の関係が成り立つと考えられますから
    コースタイムの半分で登山する場合、時間当たりのエネルギー消費は2倍と言えます。

従って発熱量も2倍となり、汗をかくことは必然です。
従って登山開始時には寒くても、発汗状態を想定した服装で出発する必要があります。
一般には歩き始めてしばらくして、体が温まったら脱ぐように書かれていますが
余分なものを着てもう一度脱ぐ脱ぐという時間的な無駄が発生しています。
寒さはほんのしばらく我慢すれば済みます。(合理的な錆鉄人です)
【注意】
冬場は薄着をする事が困難ですが、
超高速登山をすれば薄着であっても汗をかきます。
そして、汗をかいた場合、
万が一停滞しなければならなくなった場合、
急激に体温を奪われる事になり非常に危険です。
従って、冬場の超高速登山は天候や状況の判断がより重要となります。
着替えを持っていても、寒さを感じた時点での着替えは非常に困難であり、
体温低下は行動・思考能力を著しく低下させ、
回避行動・避難行動を阻害して遭難に直結する事が実証されています。

汗をかかないゆっくりした歩行に努める必要がありますが
錆鉄人には苦手な登山技術であり、従って冬の登山は基本的にやらない事にしています。
(錆鉄人は超寒がりでもあります)

4.訓練
バランス感覚、瞬時の判断能力・対応能力を養う為に
錆鉄人は下山時にはよく石の上しか歩かないゲームをしながら下山します。
(天女と一緒の場合、かなり余裕があることが多いので)
丸い、あるいは複雑な形状の石であっても、
その頂点に重心を置けば滑ることなく通過出来ます
石がまばらな場合は2m位飛ぶ場合や、
数センチの石の上に足を乗せる場合もありますが、
高速下山をしながら、そんな数センチの石でも安定した石かどうかを即断し、
判断が外れて浮き石だった場合でも素早く対応する能力を養成
します。
失敗すれば石が転がったりひっくり返ったりしてネンザの危険がありますが、
こういう時はそういう事も想定して足首を意識的に固定して歩いているので
余程のことがなければネンザにはなりません。
足首の強化にもつながると思います。
錆鉄人も磐梯山で強烈ネンザを経験していますが、
はっきり言えばネンザの原因は油断していたからでした。
足首を挫じく事は毎回のようにありますが、
瞬間はイタッ!と思いますが、ネンザにはなりません。

他でも述べていますが、
装備で補える部分は僅かです。
百名山全山日帰りの為には、自分の「心・技・体」能力の装備こそが重要です。
そして、それは全ての登山において必要な事でもあり、
はるかに安全で充実した登山が出来るという事なのです。


inserted by FC2 system