初めての4,000m峰 ブライトホルン


ブライトホルン(4,165m)

ブライトホルンはスイスで最も簡単に登れる4,000m峰として紹介されている。
今回のスイス行きの最大にして究極の目的は
日本国内では絶対に登頂出来ない4,000m峰の登頂であった。

同行のNさんは学生時代は山岳部で
その気になればマッターホルンでも登ってしまえるエキスパートである。
しかし、近年は膝を痛めていて
激しい登山も出来ないとの事で体力も低下気味であり、
とにかく4,000m峰に登って自慢しようという事で意見が一致した。
Nさんは事前に電車の乗り継ぎからホテルの予約まで完璧で
ブライトホルンへの登山に関しても調査済みであった。



装備は?
ガイドブックには、ガイド登山をする場合でもアイゼンとハーネス、ピッケルを準備するように書いてある。アイゼン装着となると当然冬用の本格登山靴が必要と連想するが、自分はそんなものは持っていないので、必用ならレンタルするつもりで行った。
レンタル店でアイゼンを借りる時に確認すると、トレッキング用に持ってきた軽登山靴(アルペンのシーズン終わりの半額セールで4,900円で買った物)でOKという事で、アイゼンをそれに合わせて調整してくれた。
ピッケルに関しては、スキーストック1本で良いとの事で、同行のNさんが2本持ってきたので、1本貸してくれるとの事で、借りる必用はなかった。
ザックはやはりアルペンで買って常時使っている35リットルのものを持っていったが、雨具とセーター1枚、レンタルで借りたハーネスとアイゼン、それにパン3つとチョコレート、500mLペットボトル2本を入れ、さらにDVビデオを入れた。デジカメはこの旅行の為に買い換えたKD-510に予備のバッテリーをウエストバッグに入れた。

ガイド組合
ブライトホルン登山はロープウェイでクラインマッターホルン(3,820m)まで登り、そこから4,165mの山頂までは2時間程度の登りであり、雪はあるといっても室堂から立山に登る程度だと思ったので、自分はガイドなんか不要で、誰かが登って行く後から付いて行けば良いと思ったが、Nさんはもしものことがあったら大変だと言うので、やはりガイド組合に申込をすることになった。
登山前日の午後、ガイド組合に行ってガイドを申し込んだが、他には誰も申し込んでいないという事であった。普通6人位を1人のガイドが引率するらしく、その場合は1万円以下だと調べていたが、2人だけなので、さらに高い案内費のグレードになったらしく、1人3万円を越えるガイド料金となったが、これが究極の目的でありしかたがない、しかも料金は前払いである。ガイド組合の女性事務員さんも気の毒に思ったのか、追加で希望者が現れたらその分料金を返すと言ってくれた。(とNさんが通訳してくれた。)
ロープウェー駅に8時にガイドと待ち合せをする事になった。ハーネスとアイゼンを用品店に行ってレンタルし、さらに食料品店に行って昼食用のパンやチョコレートなどを買った。
出発の朝
朝食は7時からであるが、興奮した我々は待ちきれずに食堂に下りていった。テーブルにはほぼ食事が用意されているので、着席してもいいかと聞くと、少し待たされたが6時45分ごろには食べ始めることが出来た。
あいにくの曇り空で雨さえも降っていたが、食事をしているとホテルのマスターが電話だと呼ぶ。Nさんが出た。ガイドからの電話で、天気予報ではもう少しすると良くなるとの事なので出発を1時間延ばして様子を見ようという事であった。高山病にならないように、水分を多めに摂取した。
ガイドの言葉通り、雨は食事をしている間にやんだ。庭に出て空を見上げるとうっすらと青い所も見えるようになった。
ロビーで時間をつぶして8時半頃にホテルを出発した。ホテルから川沿いに谷の奥へ10分程度歩いて行くと、そこがゴンドラ乗り場のヴィンケルマッテン(Winkelmattenn)である。
ロープウェー駅

この橋を渡った所が広場になっていて、すでに10人近い登山者がたむろしていた。そこにガイドもいて、自己紹介をして装備を確認し出発。ガイドの切符代はガイド量に含まれているようだった。往復の切符を買った。
左の写真の奥にエレベーターの乗り場があり、それに乗って上がった所がゴンドラの乗り場である。混雑はまるでなく、並ぶ必用はなく、来たゴンドラに3人で乗った。

いざ出発 9:45
ゴンドラからロープウェーに乗り換える駅は中学生位の大集団が乗り場にあふれていた、スキーをする格好だった。
ガイドはその横をすり抜けて先に進み、ロープウェーに乗り込みクラインマッターホルンに向かった。このロープウェーはスパンがとても長くワイヤーも大きくたわんでいる。乗りながら風が吹いたら揺れて怖いだろうなと思った。ロープウェーは急角度で高度を上げ、岩角に新雪が降り積もっている新雪が登るにつれて多くなった。
やがて、クラインマッタホルンに到着。ここは3,884m、すでに経験のない高度であるが、息苦しさなどは感じなかった。トンネルを通り抜けるとそこはスキー場で、左に目指すブライトホルンが白く輝いていた。曇りではあるが、所々青空も見え、まずまずの天気であった。ここでハーネスを装着、アンザイレンしてガイド、Nさん、自分の順で歩き出した。間隔は約5m程であった。

しばらく踏み固めた上を歩き
左の雪原へと進んだ。

アイゼンは付けなかった。
ルート
ブライトホルンの中腹には頂上付近から鞍部左下にかけてクレバスが見えていて、クレバスの真ん中辺りのスノーブリッジから左上にトラバースルートではなかと思われる雪のへこみが見えた。
鞍部一帯はクレバスになっているのか、ガイドは鞍部の一番奥を目指して大きく回りこみながら先導していく。まだ誰も歩いていない新雪の上を進むのは気持ちが良かった。
ガイドはガイドブックに書いてある通り、日本人の常識とはやや速いと思われるペースで進んで行くが、自分には物足りない。折角の新雪なので(とは言っても10〜20cm程度だが)1m程右を歩いた。

左上はトラバースして稜線まで出た後
回り込んでスイス側を頂上へ進む
ヒドンクレバス
そのうちに、時々しかストックを突かなかったガイドが探るようにストックをつきながら進むようになった。この辺りはヒドンクレバス(隠れたクレバス)がある所に違いないと感じたので、自分もストックで前を探りながら進んだ。
すると目の前のNさんがいきなりクレバスに落ち込んだ。慌てて引っ張り出そうと寄ろうとすると、危ないから来るなと言って、自分で這い上がってきた。
Nさんはガイドに連れてこられてクレバスに落ちるとは思っていなかったようで、少し泡をくったように「アーぁ、びっくりした」と言って雪を払っていた。
ガイドはニヤニヤ笑っていた。我々のガイドはなかなか粋な計らいをしてくれるガイドだったようである。もう少し右に寄ったルートをとればなんともないと思われるが、スイスでクレバスにはまるなんて滅多に出来ない経験をさせる為に、わざとここを通ったのではないかと思った。今でも自分がはまらなかったことが少し残念ではある。

休憩 10:45
雪原を回りこんで、いよいよブライトホルンの斜面に取り付いた。予想通り、スノーブリッジの所に向かっていた。クレバスの手前でガイドが立ち止まった。約1時間経ったので日本式に休憩のようである。ガイドは腰を下ろして何やら食べ始めた。我々もパンやチョコレートを食べた。

出発点のクラインマッターホルンが小さくなっていて、それなりに進んできたことがわかる。ガスも晴れてきて周囲の山々も顔を覗かせてきた。我々の後を20分程遅れで何組かのガイドなしのグループが着いて来るのが見えた。
休憩は案外長く10分以上で、休憩などしたのないこと自分は手持ち無沙汰であった。
スノーブリッジの通過 11:03
休憩の直後、クレバスにあるスノーブリッジを通過した。歩く部分はほとんど水平な所がなく、右も左もクレバスへと切れ込んでいた。Nさんが通過するのを待って、少し緊張して進んだ。
この先は10cmほどの新雪しかなく、歩いた後に踏み固められた古い雪が現れた。クラインマッターホルンからの眺めで想像していたよりは斜面は急に感じた。

そのまま斜面をトラバースして尾根まで行く
登頂! 11:40
クレバスを通過した後も大きく回りこんで登って行くので、頂上は近いが案外時間がかかったが、遂に頂上に到着。この瞬間だけ周囲Iのガスが晴れ上がり、ガイドはピークを指差しながら山名を教えてくれた。ガスが晴れたのはこのしばらくの時間だけで、幸運であった。

     モンテローザ等の山々を背に


       後はマッターホルン
手で隠れないように低くVサインをした。一通り写真を撮ってから腰を下ろしてパンを食べた。やがて我々の後を付いて来たガイドなしのグループも歓声を挙げて到着。ガイドは求めに応じて写真を撮ってやっていたが、もうこの時は周囲はガスに包まれていて、ほとんどの山は見えなかった。3万円ずつ出してこの山頂からの展望を買ったように感じた。
下山
次々とグループが到着するので、我々は下山することになった。
今度は順番が逆になって自分が先頭になって歩いた。スノーブリッジを渡った所で、登って来たルートは左に大きく迂回して下に戻ってきているが、ガイドはそこを真っ直ぐに走って下降すれば良いという。気持ちよく一気に走り下りたが、Nさんの膝の調子が良くないことを忘れていて、途中でスピードを落とすように言われて気が付いた。
しかし、本当に気持ちよく一気に走り下りたのでスカッとした。
クラインマッターホルンのトンネル入口の所でガイドと別れる事にした。ガイドはNさんにサインを求めた、契約通り登山をガイドしてという内容であろうか。
さて、ここまで戻るとNさんはやや疲れたようで、少し休憩してから、トンネル手前にある氷河のトンネルに入って、氷の芸術の展示場を見学した。オフシーズンだからか無料で通過出来た。
それから、クラインマッターホルンの展望台に登る事にした。
クラインマッターホルン 3,883m
   
トンネルからエレベーターで昇った後、階段を登るとそこがクラインマッターホルンの山頂、展望台になっている。勿論、これは登山とは言えない。


もうマッターホルンは見えない。
次々とガスが湧いてきていた。

展望台はかなり広く、一角に十字架が飾られていた。
ツェルマットへ
一応見るもの、行く所は全部行って、登頂した喜びを胸にツェルマットに戻り、ハーネスとアイゼンをスポーツ用品店に返した。記念に登山靴を買おうかと思ったが余り安くはなく、特売品もあったが欲しいものはなかった。

ロープウェーは落ちるように下る
中央がツェルマットの村

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